採桑老

採桑老（さいそうろう）について

採桑老（さいそうろう）は、雅楽の中でも唐楽に属する曲の一つです。この作品は、主に盤渉調で構成され、管絃と舞楽の形式を持っています。特に管絃の部分は、延八拍子の中曲として演奏されます。

舞楽の特徴

この舞楽は、舞人が一人で演じるスタイルが特徴であり、百済の国の採桑翁というキャラクターが登場します。舞人は杖や介添えの者に寄りかかりながら、老齢による歩行の難しさを抱えて舞台に現れます。彼の姿は、三十歳から百歳までの人間の老いを、十年ごとに表現した詩の内容も反映しており、観客に深い感慨を与えます。

さらに、この舞楽は唯一無二の老人の舞であり、高齢の者が演じることが求められる特殊な作品として知られています。これにより、採桑老は非常に特別な地位を占めており、高齢者に対する深い敬意が表現されています。

歴史と伝説

この作品にまつわる伝説の一つに「舞うと死ぬ」という言い伝えがあります。これが示す通り、採桑老は単なる舞楽の枠を超えた神秘的な意味合いを持っていると言えるでしょう。

宮内庁楽部にはこの作品に関する資料が保管されていますが、舞い方を詳細に示した舞譜は存在しません。そのため、実際に演奏することは難しく、曲は現行曲として『明治撰定譜』に含まれていますが、実演される機会は非常に稀です。

復活と近年の演奏

1962年には採桑老が復活上演され、以後もその演奏例が見られるようになりました。特に注目すべきは、元宮内庁楽部の東儀俊美が2007年6月9日に国立劇場小劇場で舞った際のパフォーマンスです。この演奏では、天王寺楽派に属する東儀家の覚書を基に、舞譜集『掌中要録』や『明治撰定譜』を照合し、約20分の曲に復元・構成されました。

このように、採桑老はその特殊な歴史、歌詞の深い内容、そして秘曲としての立場から、雅楽の中でも重要な位置を占めている作品です。近年の復活を経て、さらなる演奏機会の拡がりが期待されます。

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