接触連星

接触連星（Contact Binary）

接触連星とは、宇宙に存在する連星系の中でも、特にその物理的な配置がユニークな形態の一つです。通常、連星を構成する二つの恒星は、互いの重力によって束縛されながらも、ある程度の距離を保って公転しています。しかし、接触連星の場合、この恒星間の距離が極端に縮まり、文字通り、二つの恒星の表面が物理的に触れ合っている状態か、さらに進んで一つの巨大なガス状の外層を共有している状態になっています。

特徴と分類

接触連星の最大の特徴は、その名の通り、構成する恒星同士が物理的に「接触」している点にあります。この「接触」には二つの主な形態があります。一つは、二つの恒星の表面が互いに触れ合っている状態。もう一つは、重力的な相互作用によって、二つの恒星が共通のガス状の外層に包まれている状態です。特に後者の、恒星全体を覆う共通の外層を持つ形態は、区別して「過剰接触連星（Overcontact binary）」と呼ばれます。この共通外層内では、エネルギーや物質が両恒星間で効率的にやり取りされていると考えられています。

観測されている接触連星の多くは、互いが周期的に相手を隠すことで全体の明るさが変化する「食連星」の性質も併せ持ちます。このような、食現象を示す接触連星は、その代表的な天体がおおぐま座の方向にあるおおぐま座W星であることにちなみ、「おおぐま座W型変光星」という分類名で広く知られています。おおぐま座W型変光星は、周期的な明るさの変化を示す変光星の一種であり、その変光パターンは、二つの恒星が互いを周期的に食い合うことによって引き起こされます。

共通外層との違い

接触連星は、しばしば「共通外層（Common envelope）」という概念と混同されやすいのですが、これらは根本的に異なる現象を指します。最も重要な違いは、その継続期間と安定性にあります。

接触連星が、恒星の寿命の多くの期間（数千万年から数十億年）にわたって維持される比較的安定した構造であるのに対し、共通外層は連星系の進化の過程で一時的に発生する、極めて短期間（数ヶ月から数年）の段階を指します。共通外層の状態は、恒星進化のある特定の段階、例えば一方の恒星が膨張してロッシュ・ローブを溢れ出した際に形成されます。この共通外層の状態は非常に不安定であり、最終的にはその外層が外部に放出されるか、あるいは二つの恒星が重力的に引き合いすぎて一つに融合するかのいずれかに至ります。つまり、共通外層は連星系が次の安定した形態へ移行する、あるいは崩壊する過程の一時的な状態であり、接触連星のように長期にわたって安定して存在し続ける形態ではありません。

関連事項

接触連星に関連する天体としては、VFTS 352などが知られています。

接触連星の研究は、恒星進化や連星系の相互作用、さらには天体物理学における物質移動や角運動量輸送といった複雑なプロセスを理解する上で重要な手がかりを提供しています。

もう一度検索