接近阻止・領域拒否

接近阻止・領域拒否（A2/AD）

接近阻止・領域拒否（Anti-Access/Area Denial、A2/AD）は、中国の海上軍事戦略に関連し、特に米中間の軍事的緊張において重要なコンセプトとされています。この用語は2009年にアメリカ合衆国国防長官官房が発表した年次報告書で初めて紹介され、その後の報告においても言及されました。この戦略は、アメリカ軍による中国への介入を避けることを目指し、軍事バランスを中国側に有利に傾ける手段として進化してきました。

背景と発展

接近阻止・領域拒否戦略は1982年にさかのぼります。その年、鄧小平の指導の下で中国人民解放軍の近代化計画が策定され、第一列島線と第二列島線が重要な戦略抵抗線として位置づけられました。この列島線は、ソビエト連邦やその他の東側諸国が太平洋において西側諸国に対抗するための防衛ラインとして提案されました。中国はこれを再定義し、地域の安全保障においてより主導的な役割を果たすことを目指しました。

1991年にソビエト連邦が崩壊し、米中関係が徐々に悪化すると、中国はアメリカを主要な潜在的敵国と見なすようになりました。また、改革開放政策による経済成長が進み、エネルギー資源の輸入が増大しました。その結果、中国は海洋権益の防衛を強化し、さらに海上優勢の確保が求められるようになりました。

特に1996年の台湾海峡ミサイル危機は重要な転機です。このミサイル危機において、アメリカが展開した海軍の圧力に対抗する効果的な手段を持たなかった中国は、海上優勢の重要性を再認識しました。これを受け、新たな軍事戦略として接近阻止・領域拒否が策定されたとされています。

A2ADの戦略的要素

接近阻止・領域拒否は、主に海上と空中の作戦を基盤とし、２つの主要要素から成り立っています。

接近阻止（A2）

接近阻止の戦略は、アジア西太平洋地域におけるアメリカ軍の介入を防ぐことを目的としています。特に地上基地からの兵力をターゲットにしており、中国はこの方針の下で自国の防衛能力を強化しています。

領域拒否（AD）

領域拒否の作戦は、第2列島線以内の海域でアメリカ軍が自由に活動できないようにすることを目指しています。これは、主に海軍力に依存しており、アメリカの海上作戦を制限するための取り組みです。

技術と能力

接近阻止・領域拒否の実現には、さまざまな軍事的能力が求められます。これには近海行動防御や遠海防御が含まれます。

近海行動防御

攻撃機、通常動力型潜水艦、機雷、対艦ミサイルを装備したミサイル艇や水上戦闘艦によって、縦深防御体制が強化されています。

遠海防御

遠海防御には、偵察衛星やレーダーなどのC4ISRシステムが果たす役割が大きいです。これにより、敵の動きを把握し、即座に作戦部隊に情報を伝達します。

結論

接近阻止・領域拒否は中国の軍事戦略の中核を成す概念であり、将来的な軍事的対立における重要な要素です。この戦略は、米中間の緊張を反映するものであり、国際関係や地域安全保障に大きな影響を与える可能性があります。

もう一度検索