握衍ク鞮単于

握衍朐鞮単于（あくえんくていぜんう）

握衍朐鞮単于は、前漢時代の匈奴の単于であり、紀元前58年に亡くなりました。彼は烏維単于の来孫にあたり、握衍朐鞮単于というのは彼の単于号で、姓は攣鞮氏、名は屠耆堂（ときとう）といいます。

生涯

即位まで

地節2年（紀元前68年）に父の跡を継いで右賢王となりましたが、まもなく虚閭権渠単于によって退けられた顓渠閼氏と関係を持つようになります。

神爵2年（紀元前60年）に虚閭権渠単于が亡くなると、郝宿王の刑未央が諸王を招集しようとしましたが、顓渠閼氏とその弟である左大且渠の都隆奇は、諸王が集まる前に右賢王の屠耆堂を擁立して握衍朐鞮単于としてしまいます。

即位後

即位した握衍朐鞮単于は、漢との和親を図るため、弟の伊酋若王の勝之を漢に派遣しました。その一方で、虚閭権渠単于時代の用事貴人や郝宿王の刑未央らを殺害し、顓渠閼氏の弟である都隆奇を重用しました。さらに、虚閭権渠単于の子弟や近親者を罷免し、代わりに自分の子弟を要職に就けました。虚閭権渠単于の子である稽侯狦は即位できなかったため、妻の父である烏禅幕のもとに身を寄せました。この年、以前から握衍朐鞮単于と不仲だった日逐王の先賢撣が漢に帰順したため、漢は彼を帰徳侯に封じました。これに対抗して、握衍朐鞮単于は従兄の薄胥堂を新たな日逐王に任命しました。

神爵3年（紀元前59年）には、先賢撣の2人の弟を殺害しました。烏禅幕が助命を懇願しましたが、握衍朐鞮単于が聞き入れなかったため、烏禅幕は彼を深く恨むようになりました。その後、左薁鞬王が亡くなると、握衍朐鞮単于は自分の末子を薁鞬王に任命し、単于庭（本拠地）に留めました。しかし、薁鞬貴人たちは共に故薁鞬王の子を立てて王とし、東へ移動しました。握衍朐鞮単于は右丞相に1万騎を与えてこれを討伐させましたが、逆に数千人を失って敗北してしまいます。この頃から、握衍朐鞮単于は暴虐的な振る舞いから国内で人望を失っていました。また、太子左賢王が何度も左地の貴人たちを非難したため、彼らの恨みを買っていました。

没落と死

神爵4年（紀元前58年）、東方の烏桓族が匈奴東辺の姑夕王を攻撃し、多くの人民を奪いました。これに激怒した握衍朐鞮単于を恐れた姑夕王は、烏禅幕や左地の貴人たちと共に、虚閭権渠単于の子である稽侯狦を擁立して呼韓邪単于とし、左地の兵4～5万人を率いて西の握衍朐鞮単于を攻撃しました。握衍朐鞮単于の軍は戦うことなく敗走し、彼は弟の右賢王に救援を求めましたが拒否されたため、怒りと恨みから自殺しました。左大且渠の都隆奇は右賢王のもとへ亡命し、その民衆は皆、呼韓邪単于に降伏しました。

握衍朐鞮単于の死後、匈奴は呼韓邪単于と他の単于との間で内乱状態に陥り、その勢力は大きく衰退していくことになります。

参考文献

* 『漢書』（匈奴伝上）

もう一度検索