烏桓

烏桓（うがん/おかん）とは：中国北方の遊牧民族

烏桓（呉音：うがん、漢音：おかん）は、紀元前1世紀から紀元後3世紀にかけて、現在の内モンゴル自治区にあたる中国北部に存在した民族です。『三国志』などでは「烏丸」と表記されることもあります。

歴史

匈奴からの独立

漢代初期、匈奴の冒頓[[単于]]（ぼくとつぜんう）が東胡を滅ぼした際、その残党が烏桓山と鮮卑山に逃れ、それぞれ烏桓と鮮卑となりました。当初は匈奴に臣下として仕え、貢物を納めていましたが、次第に力をつけ、匈奴の単于の墓を暴いて報復するまでに至ります。

漢は度遼将軍の范明友を派遣し、烏桓を攻撃。その後も烏桓は長城地帯に侵攻を繰り返しますが、范明友によって撃退されました。新の王莽の時代には、匈奴とともに侵略を行いましたが、光武帝の時代になると、伏波将軍の馬援が征伐に向かいました。

後漢への服属

建武25年（49年）、烏桓の大人（たいじん：部族長）郝旦（かくたん）らが漢に帰順し、長城の内側に居住を許されました。彼らは遼東属国などの諸郡に分かれて住み、護烏桓校尉の保護を受けながら、漢のために塞外の偵察や警備の任にあたります。

しかし、永平年間には欽志賁（きんしほん）が反乱を起こし、鮮卑も再び漢を攻撃。遼東太守の祭肜（さいゆう）によって鎮圧されました。その後も烏桓は鮮卑や匈奴と連合して略奪を行うことがありましたが、漢によって鎮圧され、次第に漢に接近。大人戎末廆（じゅうまつかい）が都尉に任じられるなど、関係を深めていきました。

蹋頓（とうとん）の登場

後漢末期になると、丘力居（きゅうりききょ）や難楼（なんろう）といった有力な大人が現れ、それぞれ王を名乗るようになります。中山太守の張純（ちょうじゅん）が丘力居の配下に入り、反乱を起こすと、烏桓は青・徐・幽・冀の四州を攻略するまでに勢力を拡大しました。

丘力居の死後、従子の蹋頓（とうとん）が後を継ぎ、袁紹（えんしょう）との同盟を通じて勢力を維持しました。しかし、曹操（そうそう）が河北を平定すると、蹋頓は袁尚（えんしょう）を匿い、曹操と対立。建安11年（206年）、曹操自らが柳城（りゅうじょう）に蹋頓を攻め、蹋頓は討ち取られました（白狼山の戦い）。

魏への帰順

蹋頓の死後、残党は遼東に逃れましたが、遼東太守の公孫康（こうそんこう）によって討たれ、烏桓は瓦解しました。その後、彼らは漢の内地に移住させられ、曹操の軍に組み込まれました。景初元年（237年）には、寇婁敦（こうろうとん）らが魏に降伏し、その配下の指揮官が王に封じられるなど、魏への帰順が進みました。

習俗

烏桓は騎射に長け、遊牧生活を送っていました。穹廬（ゲル）を家とし、狩猟や牧畜によって生計を立てていました。若者が貴ばれ、老人が賤しめられる傾向があり、勇敢な者が大人として選ばれました。

結婚の際には、まず男女が密かに情を通じてから、仲人を立てて嫁取りの礼を行いました。妻は家の中で重要な役割を果たし、戦闘以外のことは婦人の指図で決められました。父や兄が死ぬと、その妻を自分の妻とするレビラト婚の習慣がありました。

病気になると、艾（もぐさ）でお灸をしたり、焼いた石を患部に押し当てたりするなどの治療を行いました。また、天地山川の神々に病気の平癒を祈願しました。葬儀では、歌舞によって死者を送り出し、犬や馬を火葬にしました。

民族・言語系統と名称

烏桓族の祖先は東胡であるとされていますが、東胡の言語系統ははっきりしていません。烏桓と同族とされる鮮卑についても、モンゴル説やテュルク説など諸説あります。

「烏桓」という名の語源についても諸説あり、白鳥庫吉のukhagan（蒙古語：知識・聡明）説、馮家昇のubusun（蒙古語：草）説、丁謙のulan（蒙古語：紅）説などが提唱されています。内田吟風は、「烏桓＝帰順来降者」説を提唱しました。

主な指導者

郝旦（かくたん）
欽志賁（きんしほん）
無何（むか）
丘力居（きゅうりききょ）
楼班（ろうはん）
蹋頓（とうとん）

関連項目

中国の異民族
匈奴
鮮卑
護烏桓校尉
後[[漢書]]
三国志
* 遊牧民

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