摩耶寺

摩耶寺

東京都品川区荏原七丁目に静かにたたずむ摩耶寺は、日蓮宗に属する寺院です。仏教の開祖であるお釈迦様のご生母、摩耶夫人を本尊としてお祀りしている点が、全国的にも稀有な特徴として知られています。

歴史

摩耶寺の創建は、伝承によれば江戸時代の寛文七年（1667年）に遡ります。寺院にとって重要な仏像や祖師像が造られたのは、それから間もない延宝年間です。具体的には、延宝五年（1677年）に日蓮聖人の御影（祖師像）が、そして翌延宝六年（1678年）には、現在寺院に安置されている尊貴な摩耶夫人像が造立されました。

これらの多くの像は、当時の江戸幕府による日蓮宗不受不施派への厳しい弾圧という歴史的背景の中で、重要な役割を果たすことになります。弾圧を逃れるため、あるいは宗派内の事情により、かつて同じ品川区内にあった法華寺（現在の円融寺）から摩耶寺へと移されてきたと伝えられています。このような経緯を経て、摩耶寺は貴重な仏像や祖師像を受け継ぎ、今日に至るまで大切に守り続けています。

摩耶夫人を祀るための専用のお堂、摩耶堂が建立されたのは、江戸時代後期の天保年間（1830年–1843年）のことです。創建以来、寺院は幾多の時代を経てきましたが、幸いなことに、近代において日本列島を襲った二つの大きな災厄、すなわち1923年の関東大震災と、その後の第二次世界大戦における戦火からその伽藍を免れました。これにより、古い歴史を持つ建物や像の一部が現代まで伝えられています。ただし、現在の本堂は、創建当時のものではなく、1978年に再建された建物です。

地域社会との結びつきも深く、摩耶寺は品川区荏原地区で行われている荏原七福神巡りの札所の一つとなっています。ここでは、七福神の一柱である寿老人が祀られており、長寿や幸福を願う人々の信仰を集めています。

境内と主な施設

摩耶寺の境内には、現在の本堂を中心に、摩耶夫人像を安置する釈迦堂（摩耶堂）などの主要な建物があります。参拝者の休憩や行事などに利用される摩耶寺会館も境内に設けられています。静かで落ち着いた雰囲気の中で、参拝者は心を落ち着かせることができます。

小山八幡神社との歴史的な関係

摩耶寺は、寺院に隣接して鎮座する小山八幡神社と密接な歴史を持っています。明治時代初頭に政府が推し進めた神仏分離令が発布される以前、摩耶寺は小山八幡神社の別当寺（べっとうじ）として、その運営や祭祀に関わる一切を管理する役割を担っていました。これは、日本の歴史における神道と仏教が融合していた名残を示す重要な事例と言えます。

交通案内と拝観情報

摩耶寺へのアクセスは比較的便利です。鉄道を利用する場合、東急目黒線の西小山駅からは徒歩でおよそ7分、洗足駅からは徒歩でおよそ8分で到着します。また、東急大井町線と東急池上線の接続駅である旗の台駅からも徒歩でおよそ12分と、複数の路線からアクセス可能です。拝観料は無料であり、気軽に訪れて歴史ある境内や摩耶夫人像を拝むことができます。

摩耶寺は、都心に近い品川区にありながら、創建以来の歴史を刻み、特に全国的にも珍しい摩耶夫人を祀る寺院として、多くの人々に知られています。地域の信仰の中心であると共に、歴史的な経緯や文化財を伝える貴重な存在です。

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