摩耶夫人

摩耶夫人：釈迦の母とその生涯

摩耶夫人（まやふじん）は、仏教において釈迦牟尼仏の生母として広く知られています。パーリ語やサンスクリット語では「マーヤー(Māyā)」と呼ばれ、一般的には彼女の名前とされていますが、近年の研究では母を意味する言葉の俗語形である可能性も指摘されています。

生い立ちと結婚

摩耶夫人の生没年は正確には分かっていませんが、コーリヤ族の出身であり、釈迦族の王シュッドーダナ（浄飯王）と結婚しました。王族の妻としての生活を送っていたと推測されますが、詳細な記録は残されていません。

釈迦の誕生と摩耶夫人の死

紀元前6世紀頃（諸説あり）、摩耶夫人は釈迦を生みました。仏典の記述によると、彼女は白い象の夢を見て釈迦を懐妊したと伝えられています。釈迦の誕生は、ルンビニー園という場所で、花を手折ろうとした際に右脇から釈迦が生まれたとされています。この描写は、古代インドの文献にあるクシャトリア階級の誕生に関する記述と関連付けられています。

釈迦誕生後7日目に摩耶夫人は亡くなったとされています。その後、彼女は忉利天（とうりてん）に転生したと仏典には記されています。釈迦はその後、摩耶夫人の妹であるマハー・プラジャパティーに育てられました。マハー・プラジャパティーは後にシュッドーダナ王の後妻となったとされています。

仏典における摩耶夫人

摩耶夫人は、様々な仏典に登場します。『摩訶摩耶経』や『華厳経』などでは、天上の摩耶夫人が描かれ、釈迦が悟りを開いた後に忉利天に昇り、母である摩耶夫人にそのことを報告したという説話は有名です。この場面は「三道宝階」と呼ばれ、仏教美術において重要な題材となっています。

信仰と現代

インドでの摩耶夫人への信仰は、中国や日本へと伝わりました。日本では、特に日蓮宗の寺院で尊崇されています。安産や子育て、婦人病などに利益をもたらすと信じられており、多くの信仰を集めています。また、幼少時に母を亡くした人々にとって、母への思いを込めた信仰の対象ともなっています。明恵上人や泉鏡花といった著名人も、摩耶夫人を信仰したことで知られています。

まとめ

摩耶夫人は、釈迦牟尼仏の生母として、仏教において重要な存在です。彼女の人生は詳細には分かっていませんが、釈迦の誕生と死という重要な出来事を中心に、仏典や信仰を通して、その存在感は現在まで受け継がれています。安産や子育て、そして母を亡くした人々の心の支えとして、摩耶夫人への信仰は今後も続くでしょう。

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