支払い過ぎた縁談

支払い過ぎた縁談

『支払い過ぎた縁談』は、松本清張の短編小説で、1957年に『週刊新潮』に掲載された後、1959年に短編集『紙の牙』に収録された作品です。この物語は、階級意識や価値観の違いが引き起こす人間関係の葛藤を描いており、特に縁談に関する家族の思惑が中心テーマとなっています。作者は、軽快な短編としてO・ヘンリィのような味わいを狙ったと述べています。

あらすじ

萱野徳右衛門の家は古い家柄で、娘の幸子は良い年齢に達していました。多くの縁談が持ち込まれましたが、萱野家は相手の家柄や財産、学歴を理由にしばしば断ってきました。ある日、東京の大学講師である高森正治が古文書を見せてもらいたいと訪れ、幸子に好意的な目を向けます。この後、間もなく高森の叔父である剛隆が萱野家に現れ、甥の高森が幸子に心を惹かれているため、縁談を申し込みたいと伝えます。徳右衛門は、申し出の条件が申し分ないと感じ、幸子も満足し、同意します。

しかしその後、桃川恒夫という青年が現れます。彼は近代的な服装をしており、相当な資産家に見えました。幸福を感じていた徳右衛門は桃川の登場に迷いが生じ、さらに幸子自身も桃川に魅力を感じ始めます。そのため、彼女は高森との縁談を断ることを考え始めるのです。数日後、桃川の母が訪れ、大金を包んで結納の準備をすると告げます。東京への招待も受けることで、幸子の心は完全に桃川に傾いてしまいます。一方、高森には断りの手紙を書いたものの、彼の叔父である剛隆が萱野家に乗り込んできて、慰謝料の支払いを求めてきます。ここで物語は新たな展開を迎えます。

テレビドラマ化

本作品は、その後四度にわたりテレビドラマ化されています。最初のドラマは1961年に放送され、以降1962年、1965年、1985年に続きました。これらの作品は、それぞれ異なるキャストとスタッフによって制作され、異なるアプローチで物語が描かれました。

• - 1961年版: TBS系列の『松本清張シリーズ・黒い断層』の一作として放映。キャストには三津田健、加藤治子などが参加。
• - 1962年版: NHKの『松本清張シリーズ・黒の組曲』の一作として2回にわたり放映され、市原悦子や柳永二郎が出演。
• - 1965年版: 関西テレビ制作のシリーズの一部として放送され、三國連太郎と丘さとみが主要キャストとして登場。
• - 1985年版: TBS系列の『水曜ドラマスペシャル』にて放映。名取裕子や若山富三郎が出演し、視聴率も高い結果を収めました。

このように『支払い過ぎた縁談』は、松本清張の独特な世界観を取り入れた物語であり、時代を超えて多くの人々に愛されています。人間の感情と価値観の葛藤を描いたこの作品は、思わぬ結末が待ち受けており、読み手に深い印象を与えることでしょう。

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