放射照度

放射照度とは

放射照度（irradiance）は、物体表面が単位時間あたりに受け取る放射エネルギーの量を、単位面積あたりで表した物理量です。これは、ある面がどれだけのエネルギー照射を受けているかを示す指標となります。放射束をその面で微分することで算出できます。

単位

国際単位系（SI）では、放射照度の単位としてワット毎平方メートル（W/m²）が用いられます。これは、1平方メートルあたりに1ワットの放射エネルギーが照射されていることを意味します。天文学の分野では、CGS単位系のエルグ毎平方センチメートル毎秒（erg/cm²/s）も使用されます。

放射発散度との違い

放射照度と似た概念に放射発散度がありますが、これらは異なる概念です。放射発散度は放射源から放射されるエネルギーの量を示す指標であるのに対し、放射照度は照射される対象の指標です。つまり、放射発散度はエネルギーを放出する側、放射照度はエネルギーを受ける側を評価する量であると区別できます。

定義

放射照度（E）は、微小面積ΔSに照射される放射束Φ(ΔS)を用いて以下のように定義されます。

\( E = \frac{dΦ}{dS} \)

ここで、dSは微小面積、dΦは微小面積に照射される放射束を表します。この定義から、面積Sに照射される放射束は以下の式で与えられます。

\( Φ = \int_S E dS \)

平行光線の場合

光線が平行に入射する場合を考えると、光線と垂直な平面Anに対する放射照度をEnとします。この時、Anと角度θをなす平面Aθに対する放射照度Eθは、

\( E_θ = E_n cosθ \)

となります。この式から、入射角θが大きくなるほど、平面に斜めに入射するため、放射照度は小さくなることがわかります。

放射照度の特徴

放射照度は、光の照度と密接に関連しており、平面状の物体にエネルギーが照射される際の指標となります。照射方向にも依存し、斜めから入射すると放射照度は低下します。放射照度と放射束の主な違いは、エネルギー照射を受ける物体の面積を考慮するかどうかです。例えば、同じ放射束を放出するアンテナでも、受信するパラボラアンテナが近いほど放射照度が高くなり、より効率的にエネルギーを受信できます。

分光放射照度

分光放射照度（spectral irradiance）とは、光の波長ごとの放射照度を示す量です。これは、特定の波長の光がどれだけの放射照度を持つかを示すもので、光のスペクトル特性を評価する際に用いられます。分光放射照度の単位はワット毎立方メートル（W/m³）または、ワット毎平方メートル毎ナノメートル（W/m²/nm）が用いられます。

放射照度（E）は、分光放射照度（Eλ）を用いて以下の式で算出できます。

\( E = \int_0^∞ E_λ dλ \)

その他の関連情報

• - 放射発散度：放射照度と同じW/m²の単位を持つが、放射源からの放射を評価する指標です。
• - 放射輝度：光源や物体の面から放射される光の強さを示す量です。
• - 測光学：光を定量的に測定、評価する学問です。
• - アルベド：物体の表面における光の反射率を示す指標です。
• - 照度：人間の目に感じる明るさの指標であり、単位はルクス（lx）です。
• - 日射量：太陽から地球に届くエネルギー量です。
• - 太陽光：太陽から放射される光です。
• - 太陽放射：太陽から放射される電磁波エネルギーです。

参考文献

• - 宮本健郎『光学入門』岩波書店、1995年。

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