救世忍者乱丸

救世忍者乱丸（きゅうせいにんじゃらんまる）

救世忍者乱丸は、日本のリングで異彩を放つ女子プロレスラーであり、俳優としても活動しています。そのトレードマークである覆面は、幼少期に患った病気によって片目を失い、義眼を使用しているという背景と深く関わっています。

彼女の波乱に満ちたキャリアは、３歳の時に「網膜芽細胞腫」に罹患し、片目の摘出を余儀なくされたことに始まります。以来、義眼と共に人生を歩んでいます。空手師範だった父の影響を受けて空手を始め、その道で才能を発揮。国際武道大学に進学し、在学中には世界大会の舞台も経験しました。

大学３年次、プロレスラーへの転身を目指して複数の団体のオーディションに挑戦しますが、当初は合格を手にすることができませんでした。アニマル浜口氏が主宰するレスリング道場で研鑽を積んだ末、ようやくプロレス団体のオーディションにパス。自身の身体的な特徴を隠すために覆面レスラーとしてデビューを果たしますが、マスクを剥がされたり丸坊主にされたりといった屈辱的な扱いを受け、わずか１年半ほどで一度リングから離れることになります。

失意の中、ジャガー横田さんをはじめとする先輩や同期からの激励を受け、吉本女子プロレスJd'への入団を決意。1999年10月6日、神奈川県のクラブチッタ川崎で開催された大会で、覆面レスラー「救世忍者乱丸」として華々しい再デビューを飾りました。パートナーのCooga選手と共に、ファング鈴木選手、遠藤紗矢選手組と対戦。Jd'では、2004年4月29日に後楽園ホールで第21代TWF世界タッグ王座を獲得するなど活躍を見せますが、2005年8月14日にはJ'dスターを退団し、フリーランスとしての道を歩み始めます。

キャリアが順調に進むかに見えた矢先の2006年、彼女は急速進行性糸球体腎炎という難病に見舞われ、緊急入院。一時は人工透析や腎不全の可能性も示唆され、医師からはプロレスラーとしての復帰は絶望的だと診断されました。しかし、彼女は諦めませんでした。病と闘いながら少しずつトレーニングを再開し、驚異的な回復力を見せます。そして2008年5月、東京のディファ有明で行われたジャガー横田さん、ライオネス飛鳥さん両名の興行の第一試合で、見事にリング復帰を果たしました。

復帰後、救世忍者乱丸は大阪プロレスへの参戦が増加。2010年6月27日には、大阪プロレスお笑い王座決定戦でくいしんぼう仮面選手を破り、王座を獲得しました。この頃から、彼女は従来の空中殺法やキック主体のスタイルに加え、コミカルな要素を取り入れ始め、「プロレス界の島田珠代」と評されるなど、コミカルレスラーの第一人者として独自の地位を確立します。

2011年2月25日には、自身の自主興行である「乱丸フェスタ」を初めて開催。この興行は「世界一オモロいプロレスの大会」をコンセプトに掲げ、英語禁止マッチや小芝居マッチなど、バラエティ豊かな試合を展開しています。初回から主に大阪で開催されていますが、2014年の第9回は東京・新木場1stRINGに進出し、成功を収めました。近年は大阪の176BOXを中心に開催されています。「なにわ☆凡女美ィーナス」と称するハイビスカスみぃ選手とのタッグが黎明期にはレジェンドや男子選手とのメインイベントを飾ることが多く、男盛選手との試合も頻繁に行われました。乱丸フェスタには、コミカルを得意とする選手だけでなく、栗原あゆみ選手、華名選手、志田光選手といった当時のトップ選手や、ジャガー横田さん、井上貴子さん、豊田真奈美さんといった女子プロレス界の伝説的な選手、さらには新崎人生選手や越中詩郎選手といった男子有名選手も多数参戦した実績を持ちます。2016年9月の第16回大会では、志田光選手、朱里選手と共にアイドルユニット「ピンキーミルキー」を結成し、現在も交流が続いています。メンバーは流動的で、タッグパートナーのハイビスカスみぃ選手や小波選手、アクトレスガールズの面々も参加したことがあります。2021年3月からは、過去の大会映像をYouTubeで順次公開しており、多くのファンが楽しんでいます。

リング以外でも、救世忍者乱丸は多方面で活動しています。2011年からは、高校時代の担任の薦めもあり、自身の経験に基づいた講演活動を開始。「絶対にマスクを脱いだほうが伝わるから」という信念から、講演会では素顔で聴衆に向き合っています。2015年には、直属の後輩であるMARU氏が主宰する劇団「水色革命」に正式に加入し、俳優としても舞台に立っています。さらに、2022年には大阪に自身のバー「ばーらんまる」をオープン。営業中は自身がお酒を飲まないというユニークなルールを設けています。

得意技としては、復帰前は身軽さを生かした空中殺法や空手仕込みのキック（乱空蹴り、後ろ回し蹴りなど）を駆使していましたが、コミカル転身後は多彩な「忍法」技が特徴です。これには、相手の動きを止める「忍法カナシバリ」（稀に効かない場合、効かなかった選手に観客からのブーイングが起こる）、相手を丸め込む「忍法まるめこみの術」、姿を消す「忍法透明人間の術」などがあり、これら「忍法身代わりの術」「忍法生着替えの術」「忍法ストレッチの術」「忍法アンニュイな時間」は、相手に意図した動作をさせることができるというユニークなものです。その他、雷電、ダルマ式ジャーマン・スープレックス・ホールド、ウラカン☆ラナ、フブキ☆ラナなども使用します。

これまでにTWF世界タッグ王座、世界タコヤキ級王座、WDW女子王座、大阪プロレスお笑い王座などのタイトルを獲得しています。入場曲には、PRINCESS Fの「TECHNOTRONIC FLIGHT」や、「なにわ☆凡女美ィーナス」としてはボン・ジョヴィの「禁じられた愛」を使用しています。

プライベートでは、尼崎市でご両親と共に暮らしており、お父様は寿司店を経営されています。

救世忍者乱丸は、その類稀なる経歴とリング上での多様な表現力、そして多岐にわたる活動を通じて、プロレス界だけでなく広く人々に影響を与え続けている存在です。

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