救急料

救急料について

救急料（きゅうきゅうりょう）は、平安時代に設立された制度で、自然災害や農作物の不作によって困窮した民衆を救済するための米を指します。この制度は、当初、各国に設けられた救急田や賑給田の収益を活用し、人々に必要な支援を行うものでした。

背景と経緯

平安時代中期、民衆の生活はさまざまな課題に直面していました。特に、大規模な災害や饑饉が発生するたびに、困窮する人々が増加しました。そこで、国家はこれらの人々を救うために、救急料という仕組みを設けました。当初は、各地での賑給制度や義倉を通じて支援が行われていましたが、土地の維持や地方財政が厳しくなる中で、運営が難しくなってきました。

出挙の活用と制度の変更

こうした状況を受けて、平安時代政府は出挙の仕組みを利用することを考案しました。出挙とは、田地から一定量の米を借りて運用することで、その利益を救急料に充てる制度です。この方法により、財源の確保を図ることが可能になりました。

具体的には、天長10年（833年）6月に、大国に10万束、上国に8万束、中国に6万束、下国に4万束の稲を救急料として確保し、出挙運用することが決定されました。このようにして、各地域での救急料の確保が進められました。

特例の存在

しかし、すべての国が同じやり方で困窮者を支援できたわけではありません。たとえば、志摩国のように田地が狭く、自国の収入だけでは運営が困難な地域では、出挙を行わず、田租の中から500斛の籾穀を救急料として確保する特別な措置が取られました。こうした柔軟な対応は、救急料制度の運営において重要な要素となっています。

救急料の総量と運用状況

救急料の制度が整備されると、全国で多くの米が確保されるようになりました。『延喜式』には、全国総計388万378束の救急料が確保されたと記されています。しかし、実際には、それだけの米が民衆に無条件に渡されたわけではありません。

多くの場合、この救急料は浮橋や布施屋などの社会事業に利用されたり、法会や官舎の修理費などに流用されることがありました。つまり、救急料制度は予定されていた通りに機能したとは言い難い側面もあったのです。

まとめ

救急料は、平安時代の社会において、困窮する人々を救うための重要な制度でした。出挙を通じた財源の確保や、地域ごとの特例措置などが見られますが、運用面ではさまざまな課題があったことも事実です。この制度の歴史を振り返ることで、当時の社会構造や人々の生活がどのようなものであったかを垣間見ることができるでしょう。

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