義倉

義倉（ぎそう）とは

義倉とは、中国、朝鮮、日本において、災害や飢饉などの非常時に備えて穀物を備蓄するために設けられた倉庫のことです。米などの穀物を一般から徴収したり、富裕層からの寄付によって蓄えられました。備蓄された穀物は、非常時に人々に供給されるだけでなく、古い穀物を安価で売却したり、低利で貸し付けることで、穀物の腐敗を防ぎ、義倉の維持も図られました。

中国における義倉

義倉の起源は古代中国に遡ります。『周礼』には「委積法」という制度があったとされ、これが義倉の原型になったと考えられています。記録上明確なのは、隋の時代に度支尚書であった長孫平が定義したもので、諸侯から民衆まで一定額の粟や黍を納めさせ、各州県に義倉が設置されました。その後、歴代王朝に受け継がれ、唐の時代には全国で6,370万石もの備蓄があったとされています。しかし、不正や財政への流用などにより、南宋以降は衰退しました。

日本における義倉

日本では、隋の制度を基に大化の改新の際に義倉が導入され、大宝律令で規定されました。親王を除く全国民が、貧富に応じて穀物を納める義務がありました。律令制の衰退とともに義倉も衰退しましたが、江戸時代に入ると、儒教の影響を受けて諸藩で義倉を設ける動きが見られました。しかし、明治政府成立後には、これらの義倉の多くが政府に接収され、国家財政の穴埋めに使われたと言われています。

社倉（しゃそう）

社倉とは、義倉と同様の目的で、地域の役所や民間の主導で運営された倉庫のことです。南宋時代に朱熹が義倉に代わるものとして提唱したとされています。日本では、朱子学とともに伝わり、江戸時代には山崎闇斎、中井竹山、加藤岳楽、佐藤信淵、吉田松陰らによって、独自の社倉構想が立てられました。諸藩でも社倉を推奨する動きがあり、会津藩では早くも1654年に導入されています。また、江戸幕府も寛政の改革で「七分積金」という制度を導入しました。日本では、支配階層主導で社倉が設置されるケースが多く、義倉との混同も見られましたが、民間主導の社倉も存在し、昭和時代まで運営されたものもありました。

郷倉（ごうぐら、郷蔵）

郷倉は、江戸時代に各地に設けられた倉庫で、年貢米などの農作物を運び出す際の一時的な保管場所として、1か村または数か村ごとに設置されました。厳重な警備体制が敷かれており、場所によっては凶作に備えて作物を蓄える役割も担っていました。

関連項目

備蓄
固寧倉 - 江戸時代後期に姫路藩家老の河合道臣が藩内に整備した。
倉敷義倉
穀倉院
常平倉
囲米
* 城米

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