教育 (東京事変のアルバム)

東京事変デビューアルバム『教育』：多様な音楽性と緻密な構成が織りなす傑作

2004年11月25日、東芝EMIから発売された東京事変の記念すべきデビューアルバム『教育』。シンガーソングライターの椎名林檎が中心となり、彼女自身のソロ活動を経て、かねてからの夢であったバンド形態での創作活動の集大成として発表されました。

おもちゃ箱をひっくり返したような、多様な音楽性

アルバムは、デビューシングル「群青日和」や2枚目のシングル「遭難」を含む全12曲を収録。椎名林檎のソロシングル「りんごのうた」を大胆にアレンジした「林檎の唄」から始まり、ボサノヴァからロックへと変貌する「入水願い」、ロックンロール調の「クロール」、クラシカルなピアノインストゥルメンタル「現実に於て」とその発展形である「現実を嗤う」、ブラジリアン風味の4ビート「サービス」、ブルースとシャンソンが融合した「駅前」、マーチングリズムが印象的な「母国情緒」など、楽曲のジャンルは多岐に渡ります。

椎名林檎本人はこのアルバムについて「おもちゃ箱をひっくり返したような」と表現しており、まさにその言葉通り、様々な音楽的要素が詰め込まれた、聴き応えのある作品となっています。各楽曲の収録時間にもこだわりが見られ、6曲目「現実に於て」と7曲目「現実を嗤う」を中心に、タイトルや英題、そして収録時間が左右対称に配置されるなど、緻密な構成も特徴です。

わずか4日間のレコーディング：初期メンバーの集結と奇跡の創造

アルバム制作の裏側には、メンバーの多忙なスケジュールの中でのレコーディングという苦労がありました。亀田誠治やH是都Mの多忙により、全員のスケジュールが合う日がわずか数日しかなく、その中で17曲ものレコーディングをこなしたというエピソードは、音楽業界でも伝説的なものとなっています。ドラムスの刄田綴色は当時の状況を「そんなのやったことない」「これはヤバイんじゃないかと思うことしきりでしたね」と振り返っています。

このアルバムには、初期メンバーであるH是都Mと晝海幹音が参加しており、彼らが東京事変に参加した最初で最後のアルバムでもあります。この奇跡的な組み合わせによって生まれた音楽は、他の追随を許さない独特の個性と魅力に溢れています。

各楽曲の魅力：多様な表現と深遠な世界観

アルバム収録楽曲はそれぞれに魅力が詰まっています。「林檎の唄」は、ソロ時代の楽曲をバンドアレンジで生まれ変わらせたセルフカバーであり、歌詞にも変化が見られます。「サービス」は唯一ミュージックビデオが制作された楽曲で、2006年のコンサートツアーでは椎名林檎による新たなアレンジが披露されました。「駅前」は横浜市港北区の日吉駅をイメージして作られたというエピソードも興味深い点です。「母国情緒」や「夢のあと」といった楽曲も、東京事変独特の世界観を表現した重要な作品です。

『教育』は、椎名林檎の音楽的才能と、初期メンバーの個性が融合した、東京事変の代表作と言えるアルバムです。多様な音楽性と緻密な構成、そしてレコーディング過程におけるエピソードなども含め、音楽ファンにとって長く語り継がれるべき名盤と言えるでしょう。

もう一度検索