りんごのうた

椎名林檎シングル「りんごのうた」詳細解説

2003年 1[[1月]]25日、東芝EMI（当時）より発売された椎名林檎9枚目のシングル「りんごのうた」は、彼女にとって特別な意味を持つ作品です。前作「茎 (STEM) 〜大名遊ビ編〜」から約10ヶ月ぶり、そして東京事変のデビュー前、ソロ名義としては最後のシングルという節目の作品となったのです。

NHK『みんなのうた』との関わりと独特のアレンジ

「りんごのうた」は、NHKの音楽番組『みんなのうた』で2003年 10月から1[[1月]]にかけて放送されました。椎名林檎自身の強い要望により実現したこの楽曲は、それまでの彼女の楽曲とは異なるアレンジが施されている点が特徴です。ライブツアー「椎名林檎実演ツアー雙六エクスタシー」日本武道館公演で初披露されましたが、シングルバージョンとは異なるバンドアレンジでの演奏でした。後に、椎名林檎が結成したバンド、東京事変のデビューアルバム『教育』に「林檎の唄」としてセルフカバーが収録されています。このセルフカバーでは、タイトルだけでなく歌詞も漢字表記に変更されています。シングルバージョンの「りんごのうた」は、2019年 1[[1月]]13日発売のベストアルバム『ニュートンの林檎〜初めてのベスト盤〜』で初めて収録されました。

発売日とCCCDからの再発売

椎名林檎の25歳の誕生日である1[[1月]]25日に発売されたこのシングルは、日本のCD発売で一般的だった水曜日ではなく、火曜日に発売されたことが話題となりました。この異例の発売日によって、発売日前にオリコン週間シングルチャートにランクインするという珍しい現象も起こっています。当初はCCCD仕様でしたが、2008年 7月2日にデビュー10周年記念アルバム『私と放電』の発売に伴い、CCCD盤は廃盤となり、CD-DA盤として再発売されました。初回限定盤には、椎名林檎のトレードマークである口元のほくろを再現した「黒子ケース」仕様が採用され、話題を呼びました。また、初回限定盤、通常盤、再発盤全てCD＋DVDの1形態のみでの発売でした。

収録曲と楽曲解説

CD

りんごのうた (作詞・作曲：椎名林檎　編曲：服部隆之)

椎名林檎の意向により、子供にも聴いてほしいという思いから、歌詞やクレジット表記は平仮名で書かれています。また、子供たちに親しみやすいように、服部隆之によるラテン調アレンジが施されています。NHK「みんなのうた」ではショートバージョンが放送され、シングルとは異なり、椎名林檎が特徴とする巻き舌は用いられていません。さらに、椎名林檎自身は番組内の曲映像には出演していません。ミュージックビデオは斎藤ひろこによるキャラクターデザイン「りんごちゃん」を実写の立体フィギュアを用いたストップモーションアニメーションで制作され、円人（enjin productions）によって制作されました。

la salle de bain (作詞・作曲：椎名林檎　編曲：斎藤ネコ)

2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録の「浴室」を、斎藤ネコ編曲・指揮による52人編成オーケストラアレンジで再録音した楽曲です。タイトルはフランス語、歌詞はロビー・クラークによる英訳が用いられています。原曲の「浴室」は、デビューアルバム『無罪モラトリアム』収録の「シドと白昼夢」と共に、初期のイメージとアルバム収録時のイメージが異なる楽曲で、シンプルなレコーディング音源を複雑な構成に戻す形で再アレンジされています。タイトルの「la salle de bain」はフランス語で「浴室」を意味し、フランス映画「浴室」の原題に由来します。原曲が同映画の背表紙をヒントに生まれたため、敬意を表してフランス語タイトルが付けられました。椎名林檎×斎藤ネコ名義で発表されたアルバム『平成風俗』には、本作のオーケストラアレンジと『勝訴ストリップ』版のトラックを組み合わせたアレンジが収録されています。この曲は、先行発売された映像集「性的ヒーリング〜其ノ参〜」にミュージックビデオとして収録された後に、CD収録が実現しました。

リンゴカタログ〜黒子時代再編纂〜 (作詞・作曲：椎名林檎　編曲・録音：井上雨迩)

エンジニアの井上雨迩が、過去の3枚のアルバム収録曲を解体し、再構築した楽曲です。過去のカップリング曲の歌詞の一部が用いられています。井上雨迩は、この楽曲の制作について、「テンポなど、曲作り上の制約になるものをまとめるのに時間がかかった」と語っています。

DVD

りんごのうた (ミュージックビデオ)

デビューシングル「幸福論」から前シングル「茎 (STEM) 〜大名遊ビ編〜」までの過去のシングルのミュージックビデオを再現した内容となっています。椎名林檎のキャリアを総括するような映像で、最後はCGで彼女のホクロが消えるシーンで終わります。

* おまけ映像〜unplugged mole〜

過去のシングルミュージックビデオで使用された衣装を着た椎名林檎が、「りんごのうた」を淡々と歌う映像です。この映像を元にしたCMも放送されました。

プロモーションとミュージックビデオ

「りんごのうた」のプロモーションポスターでは、女優・俳優が過去のシングル「本能」「ギブス」「茎 (STEM) 〜大名遊ビ編〜」のミュージックビデオを再現した姿が写し出されました。ミュージックビデオの登場順は、幸福論、歌舞伎町の女王、ここでキスして。、本能、罪と罰、ギブス、やっつけ仕事、積木遊び、真夜中は純潔、茎 (STEM)～大名遊ビ編～そして、最後に「りんごのうた」の新衣装という流れとなっています。ポスターに登場する俳優は、富田靖子（本能）、麻生久美子（ギブス）、中村七之助（茎 (STEM)）です。

「りんごのうた」は、椎名林檎のソロ活動における重要な作品であり、様々な要素が凝縮された、聴き応えのあるシングルとなっています。

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