教育労働者

教育労働者の概念とその歴史的変遷

教育労働者（きょういくろうどうしゃ）は、日本における教員を捉える際の重要な概念であり、特に教員の職能が一般労働者とは異なる専門職としての側面を強調しています。この表現は、教員の職業的特性を反映し、時間の流れや論者の立場に応じて多様な意味を持つものです。主に初中等教育の教員に関連して考えられますが、高等教育の教員にも適用されることがあります。

戦前における教育労働者運動

歴史を遡ると、この概念は戦前の日本における教育運動と密接に関連しています。特に大正時代の自由教育運動から影響を受け、昭和に入るとプロレタリア教育運動や新興教育運動が台頭します。これらは、教師を労働者として位置づけ、教員の権利を主張する労働運動の火付け役となりました。1930年には新興教育研究所が創立され、日本教育労働者組合が設立されるものの、政府の圧力により早々に解散を余儀なくされました。

戦後の日教組運動と教育労働者概念

戦後、連合国による占領下で教員にも労働基本権が認められるようになりました。1947年には日本教職員組合（略称：日教組）が結成され、教育労働者という概念についての議論も活発になりました。しかし、教育労働者という言葉の持つ意味合いは、様々な観点から異なり、日教組の内部でも時期や立場によって見解が分かれました。当初は、「教育労働者を一般の労働者と同じように扱う」という意見や、「教師は労働者でありながら特別な職能を持つ」という主張が見られたのです。さらに、「教育者としての側面と労働者としての側面を統合しようとする試み」も存在しました。

1948年に施行された公務員の労働権を制限する政令201号に対しては、強い反発がありましたが、最終的には日教組は「職能資質の向上や自主的な教育内容の充実」へと方針をシフトさせ、教育労働者という概念をその基本方針に組み込みました。

労働戦線再編と教育労働者概念の変化

1989年に労働戦線が再編されると、日教組は日本労働組合総連合会（連合）に参加し、教育労働者の位置づけが再び議論の対象となります。一方で、日本共産党系の全日本教職員組合（全教）が結成され、全国労働組合総連合（全労連）の一部として活動を開始しました。日教組と全教では、教員の位置づけが異なり、全教は「教育労働者」という概念に重きを置く一方で、日教組は教師の労働強化の懸念から「労働者」の定義に特化した立場を取っています。

このように、教育労働者の概念は、時代背景とともに進化し、多くの教育現場てその重要性を再認識され続けています。そして、この概念は単に職業としての定義に留まらず、教員がその専門性を持って学びを支える重要な役割を担っていることを浮き彫りにしています。

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