敦煌文献

敦煌文献の概要

敦煌文献（とんこうぶんけん）は、1900年に中国の敦煌市にある莫高窟から発見された歴史的文書群です。この一群の文献は、長い間莫高窟の壁に隠れており、偶然に発見されたことで学術的な重要性が認識されるようになりました。この発見によって、「敦煌学」という分野が生まれ、世界中の研究者に影響を与えています。

発見の歴史

発見の瞬間は1900年にさかのぼります。道士の王円籙が莫高窟の第16窟で崩れた壁の中に四畳半ほどの空間があることを見つけ、内に埋もれた多数の経文や写本に出会いました。王円籙は字を読めなかったため、彼が見つけた文献群の重要性について認識することができませんでした。そこで彼は地元の行政に報告しますが、取り扱いが適当であったため、最初はほとんど注目されませんでした。この空間は後に「蔵経窟」または「宝庫」と呼ばれるようになりました。

この発見の後、イギリスの探検家オーレル・スタインが1907年に敦煌を訪れ、王円籙から数千点の文献をわずか4枚の馬蹄銀で買い取り、ロンドンの大英博物館に持ち帰ります。この成功により、スタインはSirの称号を授与されました。その後、フランスのポール・ペリオも訪れ、さらに貴重な文献を引き取りました。これを受けて清朝政府も敦煌文献の保護を命じましたが、王円籙が隠し持っていた一部の文献は日本の大谷探検隊やロシアのオルデンブルク探検隊に渡ることになります。1924年にはアメリカのウォーナー探検隊が敦煌の壁画を剥がすなどの略奪行為も行われました。

敦煌文献の価値

敦煌文献が壁の中に隠されることになった理由については、いくつかの説があります。主な見解は、11世紀前半に経典を焚書されることを恐れたため、隠したという説と、不要と見なされたものを適当に置いておいたという説です。後者の説が現在の主流とされています。

敦煌文献の重要性は多岐にわたります。まず第一に、その膨大な量です。推定される総数は3万から4万点にも達し、様々な分野に関する貴重な資料を提供しています。次に、年代の古さも特徴です。多くの文字資料は唐代以前のもので、これにより中国における印刷術の発展過程や、失われてしまった書物の多くが復元される鍵となっています。第三に、文献の種類が豊富である点が挙げられます。漢語の文献が多い中、チベット語やサンスクリット語など、異なる言語の素材も含まれており、宗教的な経典や当時の日常的な文書、契約書なども残されています。この結果、当時の文化や政治、宗教についての理解が深まるのです。最後に無価値と考えられたものが多く残っている点も、その希少性から高く評価されています。

研究の進展

敦煌文献は、各国の研究者に持ち帰られ、世界中での研究が進められてきました。スタインの所蔵文献は大英図書館に、ペリオのものはフランス国立図書館に保管されています。また、大谷探検隊の資料は龍谷大学や東京国立博物館などに分散されています。ロシアではサンクトペテルブルクの科学アカデミーに収蔵されており、研究は国境を越えて進展しています。

近年では、敦煌とともにトルファンでの発見が研究をさらに深める要因となっており、多国籍の研究者たちが合同で行うシンポジウムも増えてきました。その結果、敦煌学は更なる発展を遂げ、文化的な交流が促進されています。

今後も敦煌文献は、多くの価値ある学問資源として、さらなる研究が進められることでしょう。

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