文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経

『文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経』（以下『宿曜経』）は、宿曜道の根本となる教典の一つであり、一般的には『宿曜経』と略称されます。この経典は上下二巻から構成されています。

内容としては、文殊菩薩とリシ（仙人）たちが、二十七宿、十二宮、そして七曜といった天体の動きや曜日の巡りを基に、特定の日や方角などの吉凶を読み解く方法を詳述しているとされています。しかし、これはあくまで伝説的な解釈であり、実際にはインド占星術の入門書としての性格が強いとされています。

この経典は、不空金剛によって759年に中国で翻訳されたと伝えられています。ただし、その原典の存在については疑問視する見方もあり、不空が自身のインド占星術に関する知識を、弟子の史瑶や楊景風に口述筆記させたものが原型である可能性が指摘されています。

興味深い説として、下巻が史瑶による最初の翻訳本であり、上巻が楊景風による改訂・注釈版であるというものがあります。この説を支持する根拠として、下巻の方がより原典であるインド占星術の内容に近いことが挙げられます。

日本においては、空海（弘法大師）がこの経典を持ち帰ったことがきっかけとなり、曜日という概念が広く知られるようになったとされています。宿曜経は日本の占星術、暦に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

外部リンク

大正新脩大藏經テキストデータベース
密教部4のページにて、全文を公開。
中華佛典宝庫
密教部18-211299 21 P0387

もう一度検索