不空金剛

不空金剛（アモーガヴァジュラ）

不空金剛（ふくうこんごう、サンスクリット語: अमोघवज्र、Amoghavajra）は、唐代に活躍した高僧であり、訳経僧として知られています。金剛智と善無畏によって中国にもたらされた密教を唐に定着させた人物であり、その功績から真言宗において重要な存在とされています。真言宗では、三蔵法師の一人として「不空三蔵」と尊称され、真言八祖における「付法の八祖」の第六祖、「伝持の八祖」の第四祖として位置づけられています。また、「不空」と略称されることもあります。鳩摩羅什、真諦、玄奘三蔵と並び、四大訳経家の一人として数えられています。

生涯

不空金剛は、神龍元年（705年）に生まれたとされています。出生地については諸説あり、インド南部、サマルカンド、唐の涼州などが挙げられています。父はインド北部出身のバラモンであり、母はソグド系の人であったと伝えられています。

開元2年（714年）に長安に赴き、金剛智に師事して密教を学びました。開元29年（741年）に金剛智が亡くなると、師の遺言に従い、『金剛頂経』の完本を求めるとともに、勅命により『大日経』などの密教経典を入手するために、セイロン（現在のスリランカ）やインド南部に渡りました。インドでは龍智阿闍梨から、胎蔵界と金剛界の両部にわたる伝法灌頂、すなわち五部灌頂を伝授されました。

天宝5年（746年）に長安に帰国し、その後は精力的に教化活動を行いました。天宝14年（755年）に安史の乱が勃発すると、安禄山が洛陽を支配したため、不空は勅命により西京長安に戻り、大興善寺に住して灌頂の壇を築き、調伏の修法を行いました。このことが唐朝の帰依を集めるきっかけとなりました。

大暦9年（774年）に入寂しました。

訳経家としての功績

不空金剛は、110部143巻もの経典を漢訳し、その功績から鳩摩羅什、真諦、玄奘三蔵と並ぶ四大訳経家の一人として知られています。真言宗の重要な経典である『理趣経』や、宿曜道の所依とする教典『宿曜経』なども、不空が翻訳したものです（ただし、著者説もあります）。また、竜樹の著作として伝えられていた『菩提心論』は、今日では不空自身の著作ではないかと考えられています。

関連項目

真言宗
訳経僧
* 光明真言

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