宿曜道

宿曜道（すくようどう）

宿曜道は、平安時代に空海をはじめとする留学僧によって日本へ伝えられた占星術の一種です。密教占星術、宿曜占星術とも呼ばれます。

概要

宿曜道は、インド占星術（西洋占星術とインド古来の月占星術が融合したもの）、道教由来の天体神信仰、陰陽五行説などが混ざり合ったものです。北斗七星、九曜、十二宮、二十七宿または二十八宿などの天体の動きや、七曜の曜日の巡りによって吉凶を判断します。凶日には、星の神々を祀ることで運勢を好転させようとします。

主要な教典としては、『宿曜経』、『梵天火羅九曜』、『七曜星辰別行法』などが挙げられます。特に「三九秘宿」という独特の技法があり、これを簡略化したものが、一般に「宿曜占星術」として知られています。

密教においては、造像、修法、灌頂などを行う際に吉日を選ぶことが重要とされ、一行の『大日経疏』でも、吉日選定は阿闍梨の重要な資質とされていました。そのため、空海、円仁、円珍らが『宿曜経』を日本に持ち帰り、仁観が深く研究しました。957年（天徳元年）には、日延が呉越から符天暦を持ち帰ったことで研究が盛んになり、963年（応和元年）には法蔵が村上天皇の御本命供の期日を巡って陰陽道の賀茂保憲と論争しました。この頃に日本の宿曜道が確立したと考えられています。『二中歴』では、法蔵を日本の宿曜道の祖としています。

宿曜師は密教僧であることが多く、誕生月日などに基づいて星占いを行い、「宿曜勘文」を作成しました。995年（長徳元年）には、興福寺の仁宗に対し、陰陽寮が教える暦道と共同で暦を作成するようにという「造暦宣旨」が下されました（興福寺は法相宗ですが、当時は真言宗との関係も強かったとされます）。しかし、輸入された符天暦の計算方法を取り入れた宿曜道側が、1038年（長暦2年）に暦道を批判し、造暦から撤退しました。その後も、日食・月食の発生日時や大月・小月、閏月を巡って暦道と激しく争いました。また、宿曜勘文や星供・祭供などの祈祷を通じて権力者と結びつき、法隆寺や西大寺などの別当に任命される者も現れました。

平安時代後期には能算・明算父子が活躍し、白河天皇や摂関家に仕えました。平安時代末期には、天台宗の流れを汲む珍賀と、興福寺及び真言宗の流れを汲む慶算という2名の優れた宿曜師が現れ、互いに技術を磨きながら権力者と連携して勢力を争い、一族・門人によって流派が形成されるほどでした。しかし、南北朝時代以降の貴族社会の衰退とともに宿曜道も衰退し、1165年（長寛3年）に珍賀が創建した北斗降臨院が1417年（応永24年）に焼失すると、歴史から姿を消しました。

その他

『源氏物語』「桐壺」には、主人公・光源氏が誕生した際、宿曜師に運命を占わせる場面があります。

鎌倉期の藤原頼経は、珍誉という宿曜師を重用し、御所地の選定も行わせています。

参考文献

山下克明「宿曜道の形成と展開」（『平安時代の宗教文化と陰陽道』岩田書院、1996年）

関連項目

宿曜占星術
陰陽道
符天暦
禄命
星まつり

外部リンク

日本大百科全書(ニッポニカ)『宿曜道』 - コトバンク
宿曜占星術 八雲院
宿曜占星術+news｜空海が広めた人の統計学
宿曜秘宝協会
* 宿曜占星術 光晴堂

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