文翔館

文翔館：山形の歴史を語る、重要文化財の旧県庁舎

文翔館は、山形県山形市の中心部に位置する、国の重要文化財「山形県旧県庁舎及び県会議事堂」を修復・利活用した施設の愛称です。正式名称は「山形県郷土館」で、歴史的建造物としての価値だけでなく、市民の文化活動の拠点としても重要な役割を担っています。日没から21時30分までライトアップされ、その美しい姿は山形の夜を彩ります。

歴史

初代県庁舎の焼失と再建

1911年（明治44年）5月、山形市を襲った大火により、初代山形県庁舎と県会議事堂は焼失しました。この災害を教訓に、再建される新庁舎は耐火建築物として建設されることになりました。設計顧問には出羽国米沢藩出身の中條精一郎が、県工師には東京から招かれた田原新之助があたり、当時の県総予算の4分の1にあたる40万円を投じて、1916年（大正5年）6月に2代目の県庁舎と県会議事堂が竣工しました。

建築様式と構造

建物は、イギリス・ルネサンス様式で、レンガ造り（床・天井・小屋組は木造）です。県庁舎は地上2階、半地下1階の3階建てで、議事堂は平屋建て一部2階建て。外壁には南陽市産出の花崗岩、屋根には宮城県雄勝町産の黒色スレートが使われ、重厚感と美しさを兼ね備えた建築物です。

戦後の変遷

高度成長期に入り、県庁の機能が拡大するにつれて、2代目庁舎は手狭になり、各部署が分散するようになりました。このため、新県庁舎の建設計画が策定され、1975年（昭和50年）9月、山形市東郊のあこや地区に3代目の県庁舎が完成し、県庁機能は移転しました。

旧県庁舎の保存と活用

県庁移転後、旧庁舎は一時的に県東南村山地方事務所庁舎として利用されましたが、その後の活用が検討されました。1973年（昭和48年）8月には、副知事を会長とする旧県庁跡地利用問題懇談会が設置され、1975年8月には、正面本庁舎を歴史資料館として永久保存し、敷地の大部分を緑地公園とする利用計画が答申されました。山形市議会との間で市庁舎建設用地としての利用も検討されましたが、最終的に県の計画通り、跡地は整備されることになりました。

文翔館の開館

1984年（昭和59年）12月28日に、2代目庁舎および県会議事堂が国の重要文化財に指定されたことを受け、1986年（昭和61年）7月から修復工事が開始されました。周辺の緑地公園整備も行われ、1995年（平成7年）9月に事業が完了し、10月1日、「山形県郷土館」（愛称：文翔館）として開館しました。

内部構造と特徴

議事堂の修復と構造補強

県会議事堂の修復では、コンサートホールとしての利用を想定し、L字型のステンレス製補強材が両側面に設置されました。これは後世の補強であることを強調するため、あえて金属の地肌を露出させています。また、創建時から稼働する時計塔の機械式大時計は、札幌市時計台に次いで国内で2番目に古いものです。

施設概要

文翔館内部には、約250名収容の議場ホール、2つの会議室、8つのギャラリーがあり、貸し出しも行われています。また、展示室も設置されています。前庭にあたる南側には、1.6haの広さを誇る「県政史緑地」が整備され、日本庭園や噴水、石張りの広場などが設けられています。

利用状況

文翔館と県政史緑地は、一括して指定管理者が管理・運営しており、県民活動の場として利用されるほか、コンサートやライブ、屋外イベントなどが開催され、山形市中心部の集客施設としての役割を果たしています。また、山形交響楽団が練習場として利用し、小規模なコンサートも開催されています。

周辺環境

交通の要衝

文翔館は、T字路の要に位置し、正面南方向には七日町商店街をはじめとする山形市の中心繁華街が続きます。東西には県道19号山形山寺線と県道22号山形天童線が走り、交通の要衝となっています。周辺には山形地方裁判所や山形市役所などの主要施設が集まっています。

沿革

前史

• - 1876年（明治9年）8月：山形県、置賜県、鶴岡県が合併し、山形県となる。
• - 1877年（明治10年）10月：山形県会が発足。
• - 1877年（明治10年）11月：初代山形県庁舎が落成。
• - 1879年（明治12年）2月：府県会規則に基づく正式な山形県会が開設。
• - 1883年（明治16年）5月：初代山形県会議事堂が落成。
• - 1911年（明治44年）5月8日：山形市北大火で、県庁舎および県会議事堂が焼失。

文翔館の歴史

• - 1913年（大正2年）4月：初代県庁舎および県会議事堂の跡地に第2代のそれらを着工。
• - 1916年（大正5年）6月：第2代山形県庁舎および第2代山形県会議事堂が落成。
• - 1930年（昭和5年）10月：第3代山形県会議事堂が落成。第2代の方は改装して事務室として使用。
• - 1975年（昭和50年）9月：第3代山形県庁舎および第4代山形県議会議事堂が市内松波に完成し移転。旧庁舎は山形県東南村山地方事務所庁舎として使用開始。
• - 1984年（昭和59年）9月：山形県東南村山地方事務所庁舎の完成によって、同庁舎としての利用を終了。
• - 1984年（昭和59年）12月28日：国の重要文化財に指定。
• - 1986年（昭和61年）7月：修理工事を開始。
• - 1995年（平成7年）9月：修理工事終了。
• - 1995年（平成7年）10月1日：「山形県郷土館」（愛称：文翔館）として開館。
• - 2021年（令和3年）8月7日：カフェ「やまがたフルーツcafe Hongmi Full」が2階で営業を開始。

文化財

重要文化財（国指定）

• - 旧県庁舎
• - 旧県会議事堂

上記2棟は「山形県旧県庁舎及び県会議事堂 2棟」の名称で重要文化財に指定されています。

重要文化財の附指定

• - 渡廊下 1棟
• - 工事関係記録 7冊
• - 設計図 9枚
• - 旧県庁舎棟札 2枚

利用案内

開館時間

9:00 〜 16:30

入場料

無料

休館日

• - 第1・3月曜日（ただし、祝祭日の場合は翌日）
• - 年末年始

アクセス

• - 鉄道：JR東日本・北[[山形駅]]東口より徒歩18分、JR東日本・山形駅東口より徒歩24分
• - バス：山形交通・市役所前バス停より徒歩1分
• - 無料駐車場：普通車（約40台）は予約なしで駐車可。大型バス・マイクロバスは予約必要。

ギャラリー

（ギャラリーに関する具体的な情報は、提供されたデータには含まれていません。）

ロケ地

文翔館は、以下の実写作品のロケ地としても使用されています。

• - 百年の物語 - 2000年のスペシャルドラマ。
• - 流転の王妃・最後の皇弟 - 2003年のスペシャルドラマ。
• - るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編 - 2014年の映画。
• - 賭ケグルイ - 2018年のテレビドラマ。

周辺

（周辺に関する具体的な情報は、提供されたデータには含まれていません。）

脚注

（脚注に関する具体的な情報は、提供されたデータには含まれていません。）

参考文献

• - 山形市史編さん委員会 『山形市史 現代編』 山形市、1981年。
• - 山形放送株式会社新版山形県大百科事典発行本部事務局編 『新版山形県大百科事典』 山形放送、1993年。
• - 光井渉『日本の歴史的建造物 社寺・城郭・近代建築の保存と活用』中公新書、2021年1月。ISBN 978-4121026330。

外部リンク

• - 公益財団法人[山形県]]生涯学習文化財団
• - [公式ウェブサイト

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