斎宮寮

斎宮寮：平安時代の皇女と大規模な官衙

平安時代の伊勢神宮には、未婚の皇女が斎宮として奉仕しました。斎宮の日常生活を支えたのが、令外官である斎宮寮です。三重県多気郡明和町に位置した斎宮寮は、単なる住居ではなく、京の朝廷を思わせるほどの大規模な組織でした。

斎宮寮の規模と組織

斎宮寮は、斎宮の居住空間である内院、長官以下幹部が居住した中院、そして下級職員が居住し事務を行った外院の三つの区域に分かれていました。内院で斎宮は、日常生活を送っていました。斎宮が何不自由なく生活できるよう、朝廷を模した組織体制が敷かれ、120名以上の職員が配置されていました。

十三の役所が、出納、清掃、医療など、斎宮の生活全般を支える多岐にわたる事務を分掌していました。この大規模な組織運営は、斎宮の地位の高さと、伊勢神宮における斎宮の重要性を如実に示しています。

1979年には、斎宮寮の跡地が国の史跡「斎宮跡」として指定され、歴史的価値が認められています。現在もその遺構の一部が残っており、当時の様子を偲ぶことができます。

斎宮寮の成立と歴史

斎宮寮の創設時期は定かではありませんが、大宝律令施行当初から令外官として斎宮司が存在したことが確認されています。718年には、司から寮に昇格し、より規模が拡大したと考えられています。

斎宮寮の職員

斎宮寮には、多様な職種の職員が配置されていました。長官である頭（従五位上）は、伊勢国司が兼任することが多かったです。その他、助、大允、少允、大属、少属といった官職の職員に加え、史生、寮掌、使部、直丁などの職員もいました。

祭祀に関わる職員としては、主神司、中臣、忌部、宮主、神部などが存在しました。舎人司は斎宮舎人を、蔵部司は宝物の出納を、掃部司は設営と清掃を、薬部司は医療と薬の管理を、それぞれ担当していました。殿部司は雑用、馬部司は馬の飼育、采部司は采女を、水部司は水の管理、膳部司は料理、酒部司は酒の管理と醸造、門部司は門の守衛、炊部司は米の管理といった具合に、多様な職種が連携して斎宮の生活を支えていたことがわかります。

斎宮寮と祭祀

『延喜式』によれば、延長5年（927年）頃には、斎宮寮内には大宮売神四座、御門神八座、御井神二座、卜庭神二座、地主神一座など、合計17座の神々が祀られていたことが記録されています。これは、斎宮寮が単なる生活空間ではなく、神聖な場所でもあったことを示しています。

斎宮寮の衰退とその後

斎宮の制度は、江戸時代初期に廃止されました。その後、斎宮寮の建物は衰え、現在は史跡としてその名残りを偲ぶのみとなっています。しかし、斎宮寮の遺構や関連資料は、平安時代の歴史や文化を知る上で貴重な資料であり、現在も研究が続けられています。

まとめ

斎宮寮は、平安時代の伊勢神宮に仕えた斎宮の日常生活を支えた大規模な官衙でした。その組織運営や祭祀、そして歴史的背景を知ることは、平安時代の社会構造や文化、そして皇室との関係を理解する上で非常に重要です。国史跡「斎宮跡」は、この歴史を今に伝える貴重な存在となっています。

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