斎藤勇 (1887年生の英文学者)

斎藤 勇（さいとう たけし）

1887年2月3日 - 1982年7月4日

日本の英文学者、斎藤勇は、英文学研究のパイオニアとして数多くの学問的貢献を行いました。文化功労者としても知られ、東京女子大学の学長や東京帝国大学の名誉教授を歴任しました。また、彼は日本英文学会の3代目会長としてもその名を広めました。

経歴と業績

彼は福島県で農家の長男として生まれました。旧制福島中学校から旧制第二高等学校を経て、1908年には東京帝国大学文科大学にて英吉利文学を専攻しました。大学卒業後まもなく、大学院に進み、1911年に卒業。恩賜の銀時計を受け取ります。

その後は東京男女師範学校（現お茶の水女子大学である教授）を経て、東京帝国大学へ進みました。1923年からは助教授として欧米への研究旅行を行い、留学中に多くの詩人や学者と交流を持つようになります。特に、フランスやイタリア、アメリカを訪れて幅広く教養を深めることに努めました。

彼の学位取得となった論文『Keats’ View of Poetry』によって、1927年に文学博士の称号を受け、東京帝国大学教授に昇任しました。1941年には正四位に叙せられ、1943年には勲二等瑞宝章を受章。彼は名門の教授陣として学生の教育にも注力しました。

日本英文学界への貢献

斎藤は、英文学研究の発展に情熱を注ぎ、生涯にわたって多くの著作を通じてこの分野の基礎を築いてきました。彼の研究のスタイルは、文献を直接読み解く姿勢に重きを置いたもので、日本の英文学の枠組みを広げることに寄与しました。特に、英米文学の分析において、キリスト教的愛情を作品の重要な視点として捉え、大作家たちの作品を深く掘り下げました。

また、斎藤は1928年に日本英文学会を創立し、同学会を全国的組織として発展させるための努力を重ねました。1949年には基金法人として設立し、理事として英文学界での地位を確立しました。数多くの著作も残し、特に『英米文学辞典』や『思潮を中心とせる英文学史』などは後世にわたり多くの読者に利用されています。

教育者としての精神

斎藤は「至誠」を座右の銘として掲げ、後進の育成にも力を注ぎました。その教え子からは中野好夫や平井正穂といった英文学者が輩出され、その教えは今も尊重されています。東京女子大学学長の任期中には大学運営と共に英文学の教育にも関与しました。

また、国際基督教大学の教授としても国際感覚や文学教育の重要性を学生に伝え、講演を通じて学生に向けた価値観の形成に努めました。

キリスト教信仰と文化活動

斎藤は内村鑑三の影響を受けてキリスト教に深い関心を持ち、高校生のときに洗礼を受け入れました。彼の信仰はその研究活動にも色濃く反映されており、文学や文化の理解が日本におけるキリスト教文化のを発展させるためには不可欠であると考えていました。毎年、自由学園の生徒に対して礼拝講話を行うなど、信仰を持つ者として教会外でも積極的に活動していました。

最後の日々

1982年7月、斎藤は不幸な事件に遭遇し、当時27歳の孫によって命を奪われます。彼の死は日本の学界に衝撃をもたらし、斎藤の影響を受けた多くの人々から追悼の声が寄せられました。彼は95歳という高齢を迎えてもなお、研究という情熱を持ち続け、その道を歩んだ人物でした。多磨霊園に眠る彼の遺骨の上に、多くの信者や学者が敬意を表しています。

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