斎藤寮

斎藤 尞

斎藤 尞（さいとう りょう）氏は、1926年10月30日に生まれ、2015年10月30日に逝去した日本のラグビーフットボール界において重要な役割を果たした人物です。選手としても、そして指導者としても、日本ラグビーの歴史に数々の功績を残しました。

選手としての歩み

北海道で育った斎藤氏は、北海中学を経て、当時の大学ラグビーにおける名門中の名門、明治大学へと進学しました。現役時代の主なポジションは、スクラム最前列でチームを支えるプロップ（PR）と、フォワードの司令塔ともいえるフッカー（HO）でした。

特に学生時代には目覚ましい活躍を見せました。第二次世界大戦終結後、日本のラグビーが再始動したばかりの1946年から、伝統ある早明戦に5シーズン連続で出場しています。これは、当時の学生ラグビー界における彼の影響力の大きさを物語っています。

その絶頂期ともいえる1949年度シーズンには、明治大学ラグビー部の主将を任され、チームを率いました。このシーズンの明治大学は無敵の強さを誇り、東西学生ラグビーフットボール対抗王座決定戦で優勝を果たしただけでなく、シーズン全11試合で無敗を達成するという歴史的な記録を打ち立てました。主将としてのリーダーシップとプレーは、この輝かしい成果に不可欠でした。

大学を卒業した後も、斎藤氏は社会人チームの大映で現役を続けました。また、日本代表としても選出され、国際舞台での経験を積みました。1952年にはオックスフォード大学とのテストマッチ2試合、そして1953年にはケンブリッジ大学とのテストマッチ2試合に出場し、通算で4つの日本代表キャップを獲得しました。世界の強豪大学を相手に、日本のフォワードとして奮闘しました。

指導者としての貢献

現役を退いた後、斎藤氏は指導者の道へと進みました。長年にわたり、母校である明治大学ラグビー部でヘッドコーチを務め、日本の大学ラグビー界に「重戦車」スタイルを確立した伝説的な監督、北島忠治氏を補佐しました。北島監督との二人三脚で、数多くの優れた選手を育て上げ、明治大学を常に大学ラグビー界のトップレベルに維持する上で重要な役割を果たしました。

その指導者キャリアの中で最も特筆すべき功績の一つは、ラグビー日本代表監督として達成したものです。1974年に日本代表の指揮を執った斎藤監督は、日本ラグビー界が長年待ち望んでいた歴史的な勝利を掴み取りました。その相手は、1936年の初対戦以来、日本代表が一度も勝利したことがなかったニュージーランド学生代表クラブ（NZU）です。敵地であるニュージーランドのウェリントンで行われたこの試合で、斎藤監督率いる日本代表は、ついにNZUに初勝利するという快挙を成し遂げました。これは、日本ラグビー史における最も重要な勝利の一つとして、今なお語り継がれています。

1974年以降も、斎藤氏は日本代表監督を歴任しました。具体的には、1976年から1978年にかけてと、1980年から1981年にかけて再び代表チームの指揮を執りました。これは、日本のラグビー界が斎藤氏の指導力と戦術眼を高く評価していた証と言えるでしょう。

晩年と逝去

選手として、そして指導者として、日本のラグビー界に多大な功績を残した斎藤 尞氏は、2015年10月30日に肺炎のため89歳で逝去しました。驚くべき偶然ですが、その命日は、氏がこの世に生を受けた誕生日と全く同じ日付でした。

斎藤 尞氏の生涯は、明治大学での華々しい主将としての実績、日本代表選手としての国際経験、そして母校や日本代表監督としての指導者としての成功、特にNZU戦での歴史的勝利によって彩られています。彼の情熱と貢献は、日本のラグビー史において不朽のものとして、後世に伝えられていくことでしょう。

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