斎藤時頼

斎藤時頼（滝口入道）とは

斎藤時頼は、平安時代末期に生きた武士であり、後に僧侶となった人物です。彼は、明治時代に高山樗牛によって小説『滝口入道』の題材とされたことで広く知られるようになりました。

生涯

斎藤時頼の父は斎藤左衛門尉以頼とされていますが、『平家物語』では三条斎藤左衛門大夫茂頼と記されています。時頼は、内大臣・平重盛に仕えていましたが、恋人である横笛への想いを断ち切るために出家し、「滝口入道」と呼ばれるようになりました。この名前は、彼が宮中の警護にあたる滝口武者であったことに由来します。また、六波羅の武士でもあったと伝えられています。

出家後、時頼は修行を重ね、高野山真言宗別格本山の大円院の8代住職にまで上り詰めました。この背景には、母が平時忠の室である帥典侍（藤原領子）の乳母であったという繋がりがあり、智福山法輪寺で出家後、安徳天皇の即位に伴い、帥典侍の推挙で滝口武者に任じられたという説があります。

滝口入道と横笛の悲恋

『平家物語』に描かれる時頼と横笛の悲恋は、高山樗牛の小説『滝口入道』によって広く知られるようになりました。物語は以下のように展開します。

平家全盛の時代、斎藤時頼は父と同じく平重盛に仕えていました。ある日、平清盛が催した花見の宴で、時頼は建礼門院に仕える横笛の舞姿に心を奪われます。時頼は横笛に恋文を送ります。多くの求婚者の中から、時頼の誠実な文に心を動かされ、二人は愛を育むようになります。しかし、この身分違いの恋は時頼の父に許されませんでした。傷心の時頼は、横笛に何も告げずに嵯峨の往生院（現在の滝口寺）に入り出家し、滝口入道と名乗ります。

時頼の出家を知った横笛は、時頼を求めて各地の寺を訪ね歩きます。ある夕暮れ、嵯峨の地で時頼が念仏を唱える声を聞きつけます。しかし、時頼は「会うことは修行の妨げになる」と横笛を拒み、涙ながらに帰したと言います。横笛は都へ帰る途中、自分の気持ちを伝えたい一心で、近くの石に指を切り、血で「山深み 思い入りぬる柴の戸の まことの道に我を導け」という歌を書き記したと伝えられています。

横笛のその後と晩年

滝口入道は、横笛が訪ねてくることを避けるため、女人禁制の高野山静浄院へ移り住みます。それを知った横笛は、悲しみのあまり大堰川に身を投げたとも、奈良の法華寺で出家したとも言われています。横笛の死を聞いた滝口入道は、さらに仏道修行に励み、高野聖となり、大円院の8代住職を務めました。元暦元年（1184年）には、紀州の勝浦で平維盛の入水に立ち会ったとされています。

斎藤時頼（滝口入道）ゆかりの場所

大円院：時頼が住職を務めた高野山の寺院。
滝口寺：時頼が出家したとされる嵯峨の寺院。
横笛堂：横笛を祀る堂。

参考文献

『福井県史 通史編2』

関連情報

* 図書カード：滝口入道（青空文庫）

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