高野聖

高野聖（こうやひじり）

高野聖とは、中世の日本において高野山を本拠地として、各地を遊行した僧侶のことです。彼らは、寺院の建立や維持のための資金を集める勧進活動を行い、念仏を唱え、人々に死者の供養である納骨を勧めました。彼らの教えは真言宗よりも浄土教に近く、念仏を中心とした独特なものでした。

歴史

遊行を行う僧侶自体は奈良時代から存在しましたが、高野山における高野聖は平安時代に発生しました。小田原聖の教懐、明遍、重源などが始祖として知られています。高野聖は複数の集団として高野山内に居住し、中でも蓮華谷聖、萱堂聖、千手院聖の三つの集団が大きな勢力を持っていました。

高野聖は、高野山内の僧侶の中でも最下層に位置づけられており、行商人を兼ねている者もいました。しかし、時代が下るにつれて学侶方や行人方と並び、高野山の一勢力として認められるようになります。彼らは諸国を巡り高野山の信仰を広めると同時に、連歌会を催すなど文芸活動も行ったため、民衆に親しまれました。

しかし、一部の高野聖は俗悪化し、夜間に村の街道などで宿を求める際、「今宵の宿を借ろう、宿を借ろう」と声をかけるなど、迷惑行為を行う集団も現れました。彼らは「夜道怪（やどうかい）」（宿借）とも呼ばれ、「高野聖に宿貸すな 娘とられて恥かくな」という俗謡も生まれました。

天正6年（1578年）、織田信長は畿内の高野聖1383人を捕え殺害しました。これは、高野山が信長に敵対する荒木村重の残党を匿ったり、足利義昭と通じていたことへの報復であると言われています。また、当時は高野聖に成り済まして密偵活動を行う間者もおり、信長は彼らに手を焼いた末に、このような強硬手段に出たとも考えられています。

江戸時代になると、幕府が檀家制度を推進したこともあり、高野聖の活動は制限され、徐々に衰退していきました。

その他

「高野聖」は、タガメを指す夏の季語としても用いられます。

参考文献

五来重『高野聖』増補5版（角川書店<角川選書78>、1998年） ISBN 4047030791

関連項目

聖
聖坂
行脚

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