新・電子立国

『新・電子立国』は、1995年10月から1996年6月にかけてNHKスペシャルで放送された、全9回にわたるドキュメンタリー番組です。1980年代までの日米半導体業界を振り返った『電子立国日本の自叙伝』の事実上の続編として制作され、前作がハードウェア開発に焦点を当てたのに対し、本作ではソフトウェア開発の隆盛に視点を移しています。

番組では、マイクロソフトの設立からMS-DOSの開発、家庭用ゲーム機市場におけるアタリ、任天堂、セガの競争、そして一太郎やLotus 1-2-3といったビジネスソフトの開発秘話などが詳細に描かれています。単なる技術史だけでなく、時代を彩る様々な出来事や技術革新を多角的に捉え、視聴者の興味を引き込む構成となっています。

注目すべきは、当時の最先端技術や、その開発に関わったキーパーソンへのインタビューです。ビル・ゲイツ、ポール・アレン、アラン・ケイ、スティーブ・ウォズニアックといった、ソフトウェア業界を代表する人物たちが登場し、貴重な証言を提供しています。特に、ゲイリー・キルドールへのインタビューは、彼の急死わずか2日前に収録されたもので、極めて貴重な資料となっています。

番組では、映画『アポロ13』のSFX制作におけるデジタル・ドメイン社の技術、組み込みコンピュータの開発、パチンコとコンピュータの関わり、そしてインターネットやWorld Wide Web、PGPといった、当時まだ黎明期にあった技術についても取り上げています。これらの多様なトピックを通して、コンピュータやソフトウェア技術の進化、そしてそれらが社会に与えた影響を多角的に考察しています。

制作にあたっては、多くの困難があったことも明らかになっています。ディレクターの相田洋氏は、著書の中で、マーク・アンドリーセンへのインタビューの機会を逃したことや、スティーブ・ジョブズへのインタビュー依頼が断られたことなどを記しています。それでも、数々の困難を乗り越え、完成した『新・電子立国』は、日本のソフトウェア開発史、ひいてはコンピュータ技術の進化を理解する上で、貴重な資料となっています。

番組のスタッフには、三宅民夫（語り）、相田洋（企画・編集）、玉造仁一、三宅貴（撮影）、影山進乙（音声）、阿久津裕、久保木啓介（映像技術）、野口修司（海外リサーチ）など、多くのベテランスタッフが参加しています。番組のエンディングテーマには、Dan Siegel作曲のSimple Gifts（Network Music Ensemble演奏）が使用されています。

NHK出版からは、番組の内容をまとめた単行本（全6巻＋別巻1巻）が発売されていますが、映像ソフト化はされていません。NHKアーカイブスでは、一部回が視聴可能となっています。 『新・電子立国』は、単なる技術解説にとどまらず、時代の変遷と、それを支えた人々の情熱を描き出した、歴史的なドキュメンタリー番組と言えるでしょう。 その貴重な記録は、現代の技術発展を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。

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