新京成電鉄8000形電車

新京成電鉄8000形電車の概要

新京成電鉄8000形電車は、1978年（昭和53年）に登場した通勤形電車です。1985年（昭和60年）までに6両編成9本、計54両が製造されました。この形式は、新京成電鉄が自社発注で増備を進めていた車両の一つで、当時の京成電鉄の車両設計を参考にしつつ、独自の進化を遂げた車両です。

開発背景

新京成電鉄では、1970年代初頭から輸送力増強と車両の冷房化を推進していました。それまで導入されていた車両は、京成電鉄の「青電」や「赤電」に近い設計でしたが、8000形では新たな設計が採用されました。車内構造や冷房装置などの機器類は、当時の京成3500形に準じていますが、800形と比較して全ての面で性能が向上したため、形式は「8000形」と命名されました。1両あたりの製造価格は約8,500万円でした。

車体

8000形の車体は、18m級の片側3ドアで、新京成では初めてとなる両開きドアが採用されました。窓配置はdD3D3D1で、前面形状はそれまでの京成車両とは大きく異なり、非貫通の2枚窓となりました。特徴的なのは、前面の運転窓と丸形ライト周辺が茶色に隈取りされているように見える配色で、これが「たぬき」を連想させ、「くぬぎ山のたぬき」や「習志野のたぬき」という愛称で親しまれました。当初、側面行先表示器は設置されていませんでしたが、1990年から1992年にかけて全車に設置されました。車両番号は、松戸寄りの先頭車を基準に「8502編成」のように呼称されました。

塗装

製造当初、1次車（8502編成）はキャンディピンク地にマルーンのツートンカラーでしたが、2次車以降はベージュ地に茶色の帯という2代目塗装に変更され、1次車も後に塗り替えられました。2006年には、京成千葉線への直通運転開始に伴い、8502編成を除く編成がN800形に準じた新塗装に変更されました。この新塗装は、千葉線直通編成のステータスとされ、同様の直通改造を受けた8800形も同じ塗装に変更されました。しかし、2014年以降、新京成のコーポレートカラーを用いた新塗装への変更が開始され、8000形も一部が塗り替えられました。最終的には、2017年4月に8518編成のみが新塗装化されました。

機器類

制御方式は、初期車が抵抗制御でしたが、3次車からは界磁チョッパ制御方式となり、回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキが採用されました。これにより、パンタグラフが菱形1基から下枠交差形2基に変更されました。電動機は三菱電機製で、抵抗制御編成は直巻、界磁チョッパ制御編成は複巻でしたが、VVVFインバータ改造車は東芝製三相誘導電動機に交換されました。台車は住友金属工業製で、電動車がFS329S2型およびFS329S4型、付随車がFS329S1型およびFS329S3型でした。冷房装置は三菱電機製の分散式で、1両あたり4基搭載されました。扇風機は東芝製が採用され、一部編成では旧社名表記が残っていました。

改造

京成線直通への対応改造

2006年には、全編成に京成電鉄乗り入れのための誘導無線アンテナが設置されました。同時に、屋根塗装も実施されました。京成乗り入れ車は、側面帯がマルーン色に変更され、行先表示器の字幕も千葉線対応の英字併記のものに交換されました。抵抗制御の初期編成は一時的に乗り入れ運用から外され、関連機器が撤去された時期もありましたが、後に復帰しました。

VVVFインバータ化改造

2007年以降、一部編成がVVVFインバータ制御に改造されました。これにより、床材が変更され、点検蓋が廃止されました。改造された編成には自動放送装置が設置されました。しかし、一部編成は経年により改造が中止され、廃車されました。

リバイバル塗装

2001年には、8502編成が登場時のツートンカラーに復元され、「しんちゃん」のステッカーが貼られ、座席モケットにも「しんちゃん」が描かれました。2017年には、8512編成が2代目塗装に復刻されました。この塗装は、元々直通非対応車に施されていたもので、この塗装のまま京成線に乗り入れるのは初めてでした。

その他

先頭車前面には、2002年頃から排障器が設置されました。レール塗油装置は、一部編成に搭載されました。2009年からは、車内自動放送が開始されました。客用ドア付近の吊手増設や座席のスタンションポールの設置は、2013年に8518編成で初めて施工されました。転落防止幌は、一部編成のみに設置されました。

廃車

N800形や80000形の導入に伴い、2011年から廃車が開始されました。2013年には、新京成電鉄の全車両がVVVFインバータ制御車となりました。その後もVVVF改造車の廃車が進み、2021年11月1日をもって、8000形は全廃されました。これにより、新京成電鉄の全編成が車椅子スペース（ベビーカースペース）設置となりました。8502編成の先頭車はカットモデルとして保存されています。

付記

字幕には「京成津田沼」と「松戸」の表示が二つ用意されていました。これは、京成線直通運転前の日中ダイヤで使用される行先を限定し、日焼けを軽減する目的がありました。また、北習志野駅には、8000形をモチーフとした自動販売機が設置されています。

編成表

(編成表は原文のまま記述)
RHEO：主制御機（抵抗器）
CHOP：主制御機（界磁チョッパ）
VVVF：主制御機（VVVFインバータ）
pt：パンタグラフ（菱型1基）
PT：パンタグラフ（下枠交差型2基）
MG：電動発電機
CP：空気圧縮機
BATT：蓄電池
数字が灰色の編成は除籍された編成
全車日本車両製

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