新八日市駅

新八日市駅：歴史と情緒が香る近江鉄道の駅

滋賀県東近江市八日市清水二丁目に位置する新八日市駅は、近江鉄道八日市線（万葉あかね線）の駅です。駅番号はOR16。近江鉄道の路線網の中で、歴史と独特の雰囲気を併せ持つ駅として知られています。

歴史を刻む駅舎と路線

新八日市駅は1913年（大正2年）12月29日、湖南鉄道の新八幡駅（現在の近江八幡駅）とを結ぶ路線の開通に伴い、「八日市口駅」として開業しました。その後、1919年（大正8年）7月1日に「新八日市駅」と改称され、現在の駅舎は1922年（大正11年）に竣工しました。

開業当初は、現在の御園駅（開業時は飛行場駅）へ向かう路線も存在し、新八日市駅からはスイッチバックする形態でした。近江鉄道への合併を経て、八日市駅方面への路線が整備され、御園方面への路線（通称「飛行場線」）は休止を経て廃止されました。

その後、1946年（昭和21年）1月1日に新八日市駅から八日市駅間の路線が開業し、電化されました。しかし、御園駅方面への路線は1948年（昭和23年）8月1日に運行を休止、1964年（昭和39年）9月25日に正式に廃止されました。

1986年（昭和61年）11月1日には貨物取扱いを廃止。2022年（令和4年）9月20日には副駅名称として「カネヒョウ 古美術 熊木前」が追加されました。歴史的変遷を辿りながら、現在も地域住民に親しまれる駅として存在感を保っています。

駅舎と構造

新八日市駅の駅舎は、薄緑色に塗装された洋風建築が特徴です。開業から間もない1922年（大正11年）に建てられたとされ、その歴史を感じさせます。駅舎2階はかつて、湖南鉄道や八日市鉄道の本社として使用されていました。現在は相対式ホーム2面2線を有する地上駅で、平日朝と夕方の時間帯のみ有人駅となります。ホーム間は構内踏切で連絡しています。

かつては駅舎西側に平家部分がありましたが、現在は取り壊され空き地となっています。また、駅舎1階には八日市鉄道時代までの特等客用待合室の跡が残されていますが、現在は板で塞がれています。夏季にはツタで覆われると伝えられていますが、実際には他の季節でもツタで覆われているのが現状です。

利用状況と周辺環境

新八日市駅は住宅密集地に位置し、駅周辺には商店や宗教法人の教会、そして少し離れた場所には公立小学校があります。国道421号（八風街道）が駅南側を、近江鉄道本線（水口・蒲生野線）が駅東側を通るなど、交通の便も良好です。

駅周辺は生活に便利な環境が整っていますが、静かで落ち着いた雰囲気も持ち合わせています。古き良き時代の面影を残す駅舎と、現代的な生活空間が調和した、魅力的なエリアとなっています。

アクセスと隣の駅

駅前に「ちょこっとタクシー」の停留所があり、小脇・建部エリアを巡回するタクシーを利用できます（要予約）。

隣の駅は、近江鉄道八日市線で、普通列車が停車する太郎坊宮前駅（OR17）と八日市駅（OR15）です。快速列車は通過します。かつては、八日市線に新八日市駅と八日市中野駅を結ぶ路線がありましたが、現在は廃止されています。

参考文献

川島令三『【図説】日本の鉄道 東海道ライン 全線・全駅・全配線 第6巻 米原駅-大阪エリア』講談社、2009年
週刊歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 29 近江鉄道/信楽高原鐵道/伊勢鉄道/養老鉄道』朝日新聞出版、2011年
寺田裕一『改訂新版 データブック日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2013年
岩間昌子「近江鉄道本線 多賀線・八日市線」『ローカル鉄道の解剖図鑑』、エクスナレッジ、2016年
* 監修 辻󠄀良樹 『滋賀の百年散歩 新八日市駅』滋賀銀行『かけはし』Vol.307 2023年

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