新外映配給

新外映配給株式会社：知られざる映画史の一頁

新外映配給株式会社は、1952年4月に創立し、1963年11月に倒産した日本の映画会社です。その短い活動期間にもかかわらず、フランス映画を中心に、日本映画史に名を残す数々の作品を配給し、独自の足跡を残しました。

設立の経緯と初期の活動

新外映配給の前身は、第二次世界大戦後の1947年に設立されたフランス映画輸出組合日本事務所（SEF）でした。この事務所には、後に小説家として名を馳せる大岡昇平が文芸部長として参加し、字幕翻訳を手がけていました。1950年には新外映と名乗り、1951年にはフランス映画を中心とした輸入業務を開始。東宝との配給提携を通じて、ジャン・コクトー監督の『オルフェ』などの作品を日本に紹介しました。大岡昇平の退社後、文芸部長には画家の末松正樹が就任しています。

配給業務の強化と共同配給

1952年4月、東和映画に対抗し、配給業務を強化するために、社名に「配給」を加え、新外映配給株式会社として新たなスタートを切りました。鈴木崧が代表取締役社長、鈴木一誠が営業部長、池谷公男が宣伝部長という体制で、ニッポンシネマコーポレーション（NCC）、スターフィルム、泰西映画など、多くの映画会社と共同配給を行いました。秦早穂子もSEF時代から在籍しており、パリ駐在時には『勝手にしやがれ』や『太陽がいっぱい』といった名作を買い付けました。東和映画が手を出さなかったロベール・ブレッソン監督の『抵抗』やジャック・タチ監督主演の『ぼくの伯父さん』などを配給した点も特筆されます。

倒産とその後

1963年、経営者が更迭され、片山武次が社長に就任しましたが、同年11月には倒産。その後、吉岡庄蔵が社長に就任して富士映画株式会社と改称し、清算業務を行っていました。しかし、間もなくパールハウス映画代表の渡辺登が買収し、ヨーロッパ・フィルム株式会社となりました。ヨーロッパ・フィルムとしての配給作品に関する記録は、1965年6月22日に公開されたフランツ・ペーター・ウィルト監督の西ドイツ映画『網』以降は見当たらなくなっています。

文化遺産としての貢献

新外映配給は、フランス映画を中心とした作品の本国オリジナルポスターを東京国立近代美術館フィルムセンターに寄贈していました。2010年には、同センターが「戦後フランス映画ポスターの世界」として初めて公開しました。2009年10月29日には、大岡昇平がSEF時代に手がけたジャン・コクトー監督の『美女と野獣』の日本語字幕の和文タイプ原稿が、上記のポスターとともに同社コレクションの中から発見されたことが報じられました。

新外映配給は短命に終わりましたが、その活動は日本映画史において重要な役割を果たしました。同社が配給した作品群は、今もなお多くの映画ファンに愛され、その功績は忘れられることはありません。

主な配給作品

オルフェ (1951年)
鉄格子の彼方 (1951年)
輪舞 (1952年)
肉体の冠 (1953年)
青春群像 (1959年)
抵抗 (1957年)
ぼくの伯父さん (1958年)
勝手にしやがれ (1960年)
* 太陽がいっぱい (1960年)

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