パールハウス映画

パールハウス映画株式会社

パールハウス映画株式会社は、日本の映画産業が活況を呈していた1950年代から1960年代にかけて存在した映画配給会社です。1951年頃に設立され、およそ1965年頃までのおよそ15年間にわたり活動を続けました。同社は主に海外、特にヨーロッパ各国の優れた映画作品を日本国内に紹介することを事業の柱としていました。

沿革と活動

会社設立当初から、代表取締役社長には渡辺登が就任しました。活動開始は早く、設立間もない1952年には、スペイン映画『アラゴンの要塞』を日本の大手配給会社である映配株式会社と共同で配給し、国内の観客に披露しています。その後も積極的に海外作品の輸入・配給を行い、映配のほかにも、ハンセン・ベルンシュタイン商会、大映、松竹洋画部、大和フィルムといった、当時の日本の主要な映画会社や洋画系配給会社と共同で数多くの作品を公開しました。これにより、多様なルートを通じて海外の映画文化を日本にもたらす役割を果たしました。

事業の多角化と体制強化にも努めました。1956年には、西ドイツ（当時）の有力映画会社バヴァリア・フィルムなどをはじめとする欧州の映画製作会社の日本における輸入代理店として、ドイツフィルムコーポレーション（ドイツフィルム株式会社）を設立しています。さらに、1958年4月には資本金1,000万円を持つ関係会社「パールハウス映画配給株式会社」を新たに設立しました。この子会社の社長には、東京・深川で辰巳温泉などを経営する辰巳興業の社長、鈴木角五郎が就任し、鈴木は親会社であるパールハウス映画の副社長も兼務しました。また、常務取締役には、戦前に大阪で映画製作会社マキノトーキー製作所の経営にも携わった宗田政雄が名を連ねるなど、当時の日本の映画界において経験豊富な人材が経営陣に加わっていました。さらに、外国課長として在籍していた岡枝慎二は、後に日本の映画字幕翻訳の第一人者として広く知られることになります。

同社は映画の配給に留まらず、映画に関連した文化的活動にも尽力しました。1959年には、オーストリア出身の人気スキーヤーであり俳優のトニー・ザイラーの日本招聘に貢献しています。また、ドキュメンタリー映画にも着目し、1960年のスコーバレー冬季オリンピックを記録した西ドイツ製作の公式記録映画『一九六〇年冬季オリンピック大会 人類の希望と栄冠』を、大和フィルムと共同で国内配給しました。

1963年11月には、同年倒産したフランス映画中心の配給会社、新外映配給を買収し、「ヨーロッパ・フィルム」と改称しました。これにより、特にドイツ映画をはじめとするヨーロッパ映画の安定的な輸入・配給ルートを確保し、事業基盤の強化を図りました。

本社所在地と終焉

パールハウス映画の本社は、東京都中央区銀座西にあった「パールハウスビル」に置かれていました。このビルは1927年に建てられた歴史的な建築物で、かつては海外映画を扱っていたハンセン・ベルンシュタイン商会なども入居していました。しかし、残念ながらこのビルは現在は改築されており、当時の面影を残していません。

同社の活動は、1965年頃に終息したとされています。設立から活動停止までおよそ15年間という比較的短い期間ではありましたが、この間に数多くのヨーロッパ映画を日本に紹介し、当時の日本の映画市場、特に洋画配給の分野において、独自の存在感を示した会社と言えるでしょう。

主な配給作品

キネマ旬報映画データベース等に見られる、同社が日本で配給を手掛けた主な作品は以下の通りです。

『アラゴンの要塞』（1952年, スペイン）
『愛欲の涯』（1952年, フィンランド）
『妖花アラウネ』（1952年, 西ドイツ）
『双児のロッテ』（1952年, 西ドイツ）
『姿なき軍隊』（1953年, デンマーク）
『忘れられた人々』（1953年, メキシコ）
* 『一九六〇年冬季オリンピック大会 人類の希望と栄冠』（1960年, 西ドイツ）

これらの作品リストは、同社がスペイン、フィンランド、西ドイツ、デンマーク、メキシコといった多岐にわたる国の映画を取り扱っていたことを示しています。

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