新宮市歌

新宮市歌について

和歌山県新宮市の市歌である「新宮市歌」は、二度にわたり歌詞の制定が行われており、その背景には地元の文化や歴史が色濃く反映されています。1936年に制定された初代と、1951年に生まれ変わった2代目の市歌には、各々異なる魅力と特徴があります。

初代市歌（1936年）

初めての「新宮市歌」は、1936年（昭和11年）に行われた懸賞募集によって決定されました。当時、新宮市は県内で2番目に市制を引いた地域であり、その意義を表現するために市歌が必要とされていました。歌詞の作成には、海草郡西和佐村の尋常小学校の教員であり、すでに「和歌山市歌」において受賞歴のある岩橋喜宮一が選ばれました。

この初代市歌の歌詞は、全4番から成り立っており、「神倉山の御剣に…」という言葉で始まります。しかし、作曲者については不詳であり、当時の文献『新宮市史』には詳細な記述が存在していません。

2代目市歌（1951年）

1951年（昭和26年）11月3日には、2代目の市歌が誕生しました。この歌は、初代と違い懸賞ではなく、地元出身の詩人・佐藤春夫に依頼されて制作されました。彼は後に和歌山市の市歌も手掛けることとなり、全ての依頼に対して無償で応じる姿勢が印象的です。

この新しい市歌では、初代には見られなかった伝説、特に徐福渡来の伝説を描写しており、地域の歴史を反映した歌詞が多くの市民に親しまれました。また、歌詞の中でも特に注目すべきは、3番の「桴の港」で、春夫が「いかだ」の字を用い、竹を組んだものとしての本来の意味を伝えるこだわりを見せています。

作曲は、東京芸術大学で教授を務めていた信時潔が担当しました。彼との連携は、1949年に同じく和歌山県の高野町で制作された「高野町の歌」に遡ります。

平成の大合併と市歌の扱い

2005年（平成17年）10月1日、新宮市は熊野川町と合併し、新たな「新宮市」が誕生しました。この時、合併協議会では市歌に関する扱いが議題となり、新市において新たに市歌を制定する方針が決まったものの、熊野川町には町歌が存在しなかったため、合併後も旧市の「新宮市歌」を継承することが確認されました。結果、2006年4月1日に再制定されることが告示されました。

また、2022年には市内の丹鶴ホールに、佐藤春夫の愛用していた筆が収められた「筆塚」の後方に、全3番の歌詞を刻んだ歌碑が寄贈されるという形で建立されました。これにより、歌の存在がより一層市民の心に根付くこととなりました。

まとめ

「新宮市歌」は、新宮市の歴史と文化を背景に持つ大切な市民の歌として、地域のアイデンティティを支える存在です。初代と2代目それぞれに持つ特徴や経歴が、今も多くの市民に受け継がれています。これからも、市歌を通して新宮市の魅力が広がっていくことが期待されます。

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