新宮神社 (甲賀市信楽町長野)

新宮神社：歴史と信仰が息づく信楽の神社

滋賀県甲賀市に鎮座する新宮神社は、古くから地域の人々に深く信仰されてきた神社です。旧社格は郷社であり、「紫香楽一乃宮」の別名でも知られています。素戔嗚尊、櫛稲田姫尊、そして大山津見神という三柱の神々が主祭神として祀られています。

その歴史は古く、霊亀元年（715年）9月、信楽高原鐵道信楽駅の南東に位置する長野東出の滝谷に創建されたと伝えられています。以来、信楽町長野、神山、江田、小川地域における産土神として崇敬を集め、「新宮大明神」と尊称されるようになりました。近衛家をはじめ、近江国の守護大名である六角氏なども深く信仰し、神領などの寄進が代々続けられました。

しかし、神社の歴史は平穏なものではありませんでした。南北朝時代の建武3年（1336年）には兵火によって焼失する災難に見舞われます。その後再建されましたが、江戸時代初期には現在地に移転。その後も、大風の被害によって本殿が大破するなど、幾度となく困難を経験しています。寛文2年（1662年）12月24日、そして寛保3年（1743年）11月19日には、それぞれ再建工事が行われました。

明治9年（1876年）10月には村社に列せられ、大正2年（1913年）4月10日には神饌幣帛料供進神社に指定。さらに、大正4年（1915年）5月30日には、信楽町大字長野字西出、字川東に鎮座していた大山津見神を祀る二社の「山神社」を合祀しました。大正13年（1924年）には、郷社へと昇格しています。

新宮神社の信仰は、地域を越えて広がりを見せました。信楽町長野の愛宕山山頂には、境外摂社として愛宕神社、陶器神社、秋葉神社が鎮座しています。中でも愛宕神社は、慶長8年（1603年）、徳川家康によって御分霊が江戸に移され、現在の東京都港区愛宕神社の創建につながっているという由緒ある社です。

現在の境内には、寛保3年（1743年）11月19日に再建された本殿をはじめ、幣殿、中門、舞殿、祭具庫、清々館、斎館、社務所などが整備されています。摂末社としては、大國社（祭神：大国主大神、田所神社とも呼ばれる）、神武社などが存在します。また、境外社として先に挙げた愛宕神社（祭神：火産霊命）、陶器神社（祭神：天日鉾命）、秋葉神社（祭神：埴山姫命）があります。

新宮神社は、歴史的にも重要な文化財を保有しています。甲賀市の指定有形文化財である鰐口は、文安5年（1448年）作と伝えられています。また、県選択無形民俗文化財である「甲賀の祇園花行事」において、新宮神社では「花振神事」が奉納されています。この神事は、14箇所の保存会によって受け継がれ、地域の伝統文化を象徴する行事となっています。

新宮神社へのアクセスは、信楽高原鐵道信楽線信楽駅から徒歩10分です。歴史と信仰、そして地域の文化が息づく新宮神社は、信楽を訪れる際にはぜひ参拝したい場所と言えるでしょう。例大祭（5月）、祇園祭・花振神事（7月）、しがらき火祭り（7月）など、年間を通して様々な祭事が行われています。

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