新尾道大橋

新尾道大橋

新尾道大橋は、広島県尾道市に位置し、瀬戸内海に浮かぶ向島と本州とを結ぶ重要な連絡橋です。本橋は、本州四国連絡橋の一つである西瀬戸自動車道、いわゆる「しまなみ海道」の一部を構成する、自動車専用の橋梁として機能しています。

概要と特徴

平成11年（1999年）5月に供用が開始された新尾道大橋は、本州四国連絡橋の尾道・今治ルートにおける本州側の起点に架けられています。この橋の大きな特徴の一つは、そのすぐ東側、わずか55メートルという近距離に、地域住民の生活道路として利用される尾道大橋が並行して存在することです。両橋とも同じ斜張橋形式が採用されており、尾道の風景に溶け込むような景観的な一体感が意識されています。

しまなみ海道全体としては、他の本州四国連絡道路とは異なり、「瀬戸内海横断自転車道」として自転車や歩行者が通行できる道が整備されている点が特筆されます。しかしながら、この尾道水道を渡る区間に関しては状況が少し異なります。並行する尾道大橋には、かつて有料道路であった時代から一般道路として歩道が設けられていますが、新尾道大橋はあくまで自動車専用として計画・建設されたため、自転車や歩行者は残念ながら通行できません。加えて、尾道大橋の歩道は幅員が狭いため、安全確保の観点から、自転車や歩行者、さらには原動機付自転車での渡海には、橋の利用ではなく、尾道渡船など既存の渡船サービスを利用することが強く推奨されています。

また、本州側の国道2号線から直接新尾道大橋へ進入するルートは設けられていません。しまなみ海道へ向かう広域交通は、国道2号から尾道大橋を渡った先の「3 向島」という案内標識に従って進行する必要があります。

構造諸元

新尾道大橋は、国道317号バイパス（西瀬戸自動車道）の一部として位置づけられています。橋の主な構造諸元は以下の通りです。

橋長: 549.0 メートル
最大支間長: 215.0 メートル
幅員: 車道14.0 メートル
航路限界: 34.0 メートル
上部工形式: 5径間連続鋼箱桁斜張橋
主塔高: 78.3 メートル

設計思想と技術的特徴

この橋の建設は、当初、地域交通を担う尾道大橋のみで本州四国連絡道路としての役割を担う計画でしたが、西瀬戸自動車道の整備進捗に伴い将来的な交通量増大が予測されたことから、計画の見直しが行われました。その結果、尾道大橋を地域住民向けの道路、新尾道大橋を広域交通向けの道路として役割を分担させることになった経緯があります。

設計にあたっては、既に尾道のシンボルとなっていた尾道大橋との「調和」を図りつつ、新たなランドマークとしての「創造」という二つのテーマが重視されました。全く異なる形式の橋や、似た斜張橋形式など、様々な橋梁形式が比較検討された結果、尾道大橋に構造が似た「1本塔柱斜張橋1面吊り7本ハープ」形式が採用されました。さらに、景観的な一体感を最大限に引き出すため、二つの橋の支間配置、主塔の高さ、そして塗装色に至るまでが揃えられています。

構造上の工夫も随所に見られます。特に、尾道大橋との近接による耐風安定性を確保するために、主塔の断面形状や、桁の形状がへん平六角形とされた点などが挙げられます。また、道路の縦断線形（勾配）もユニークで、一般的な片勾配や中央が高い拝み勾配ではなく、支間中央に向かってV字状に下がる勾配を持つ珍しい構造となっています。

新しい技術の試みとして、主桁内部の鋼材に塗装を施さず、代わりに空気を循環させて湿度を管理することで錆の発生を防ぐシステムが、国内で初めて試験的に導入された橋としても注目されます。これは、将来的な維持管理コストの削減や効率化を目指した取り組みと言えます。

新尾道大橋は、尾道と向島を結ぶ大動脈として、広域交通を支える重要な役割を担うとともに、隣接する尾道大橋と共に尾道の景観を形成する上で欠かせない存在となっています。

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