新田官軍

新田官軍：上州新田氏の流れを汲む勤王の志士たち

新田官軍は、慶応4年（1868年）に上州新田氏の流れを汲む交代寄合、岩松俊純によって結成された尊皇倒幕を掲げる組織です。新田勤王党、新田勤皇隊とも呼ばれました。

「猫絵の殿様」岩松家と勤王倒幕の志

新田郡下田島村を所領とする岩松家は、120石という微禄の旗本でありながら、大名並みの家格である交代寄合という特別な地位にありました。「猫絵の殿様」として領民に親しまれていた岩松家当主の岩松俊純は、尊皇攘夷の思想に傾倒していきます。

慶応3年（1867年）、岩松俊純を盟主として、新田一族の末裔である大舘謙三郎、金井之恭、橋本多賀之助らが新田義貞の勤王倒幕の志を継ぎ、再び勤王倒幕を目指す新田勤王党を結成しました。しかし、その計画は幕府方に漏洩し、主要メンバーが捕縛、処刑されるという危機に陥ります。

官軍への合流と戊辰戦争

慶応4年（1868年）2月、江戸征伐に向かう東山道鎮撫総督岩倉具定率いる官軍が中山道を進軍してきた際、捕らえられていた新田勤王党のメンバーは官軍によって解放されます。岩松俊純は岩倉具定に対し、新田義貞の遺志を継ぎ、皇室のために戦いたいという内容の書状を提出しました。

その結果、新田勤王党は官軍の一部隊として認められ、新田官軍として再編されることになります。編成は本隊45名と江戸御本営御玄関番13名の計58名で、全員が新田郡の住民でした。新田官軍は、新田郡内で発生した打ちこわしを鎮圧し、軍事訓練に励みました。

その後、新田官軍は武蔵忍城への官軍進撃に従軍し、洋砲30挺と火薬の支給を受け、総督旗の守護という重要な任務を担いました。慶応4年（1868年）4月28日、官軍より出陣命令を受け、会津藩軍が侵入してきた上野国利根郡方面での戦いに参加します。

高木潜一郎の手記によると、片品川沿いを進軍中、会津藩兵の待ち伏せに遭い一時後退を余儀なくされましたが、大円寺への攻撃を仕掛けてきた400人余りの会津軍を撃退することに成功しました。これが新田官軍にとって唯一の実戦参加となりました。

戦後

新田官軍は、東京の鎮守府に編入され、市中警備にあたりました。幕府滅亡後、新田家の嫡流と認められた岩松家は、明治政府より官軍としての功績を評価され、男爵を授けられました。


参考文献
落合延孝著『猫絵の殿様―領主のフォークロア』吉川弘文館、1996年、ISBN 4-642074-88-0
野口武彦著『慶喜の捨て身―幕末バトル・ロワイヤル』新潮社、2011年、ISBN 978-4106104084
萩原進 (1975). “群馬県人”. 日本人国記 (新人物往来社)

関連書籍
神坂次郎著『猫男爵―バロン・キャット 』小学館、2002年、ISBN 978-4093433914 （岩松俊純を題材とした小説）

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