方以智

方以智（ほう いち）

方以智（Fāng Yǐzhì、1611年11月30日 - 1671年11月9日）は、中国の明末清初に活躍した思想家、自然学者、儒学者、禅僧です。彼は清に仕官することを拒み、流浪の僧として生涯を過ごしました。さまざまな分野に興味を持ち、物理学、博物学、天文学、地理学、医学、音韻学などを広く論じた人物です。特に、「質測・通幾」の思想や三教合一の主張で知られています。彼の著作は江戸時代の日本の儒学者、本草学者、蘭学者たちに幅広く読まれ、近現代の中国哲学研究でも再評価されています。

生涯

明末の時代背景と生い立ち

方以智は、1611年に南直隷の名家で生まれました。幼少期から優れた学才を見せ、家伝の易学をはじめ、様々な学問を修めました。特に、イエズス会士の影響を受け、西洋の学問にも関心を持ちつつ成長しました。20歳になる頃、李自成の農民反乱が彼の故郷にも影響を及ぼす中、南京に避難し、優れた学者たちと交流を深めました。

1639年には郷試に合格し、進士として官職への道を歩み始めますが、1644年の清の侵攻によって捕らえられ、その後脱獄し、流浪の生活に入ります。彼は清を避けながら南明に仕官しますが、政争により辞職し、偽名を用いて生計を立てます。1645年には武装勢力に捕まるも、勇気をもって自らの信念を貫き、復興を望む気持ちを持ち続けました。

その後、彼は僧侶として新たな人生を歩み始め、著作活動に専念します。1653年には受戒し、著述活動を本格化させました。彼は高座寺に隠れ住みながら、数々の著作を執筆し、それらの思想を広めました。

晩年と教育活動

方以智は1664年に江西省の浄居寺の住職に就任し、多くの著作を発表しました。彼は明代書院の復興に力を注ぎ、後進に教えを伝えようとしました。また、同時代の思想家たちとの交流も活発に行い、互いに学び合いました。彼は学問の広がりを重視し、家族との再会も果たしつつ、学問の発展に尽力しました。

幹線としての思想と学説

方以智は、「質測」と「通幾」に関する独自の見解を持っており、「質測」は自然科学に重きを置き、「通幾」は哲学的思考を指します。彼は両者の統合を重視し、学者はこの二つの側面を持つべきだと説きました。また、熱を原理とした宇宙観を提唱し、脳局在論を展開したことでも知られ、西洋医学の影響を受けた先駆者としての地位を築いていました。

主要な著作とその影響

方以智の著作には『通雅』や『物理小識』などが含まれ、これらは科学技術や音韻学において非常に重要な文献とされています。特に『物理小識』は、古今東西の文献と西洋の学問を融合させたスタイルで多くの学者に影響を与えました。

海外でも、彼の思想は注目され、特に江戸時代の日本では多くの儒学者や本草学者に受け入れられました。方以智の作品は、学者たちの研究を通じて、日本の学問にも大きな影響を与え、その内容は後世にも引き継がれています。

晩年の逝去と評価

方以智は1671年、逮捕され、その道中で病没しました。しかし、彼の思想は生前から高く評価され、清代には特に王夫之によってその学問が称賛されました。近代になってからも多くの学者に研究され、彼の業績は今なお中国哲学において光を放っています。方以智の生涯と思想は、当時の文化を深く反映しており、今日でも学び続けられています。

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