日中線

日中線：幻のローカル線が語る物語

日中線は、かつて福島県喜多方市の喜多方駅から、同県耶麻郡熱塩（あつしお）村（現在の喜多方市）の熱塩駅までを結んでいた、日本国有鉄道（国鉄）の鉄道路線でした。11.6kmの短い路線でしたが、その歴史は、日本の鉄道史におけるローカル線の在り方、そして時代の変遷を色濃く映し出しています。

路線概要

日中線は、1938年に開業しました。路線名の由来は、終点の熱塩駅の北方にある日中温泉です。全線単線、非電化の路線で、1日最大6往復の列車が運行されていました。しかし、1950年代以降は運行本数が減少し、朝夕のみの運行となり、「日中走らぬ日中線」と揶揄されるほどでした。

運行形態

開業当初は1日6往復の列車が運行されていましたが、1950年代には5往復に減少。1958年10月からは、朝1往復、夕方1往復、夜1往復の計3往復にまで削減され、日中は列車が運行しないという運行形態が、廃止まで続きました。また、貨物輸送も行われており、混合列車として運行されていた時期もありましたが、1970年代に貨物営業は廃止されました。

蒸気機関車の終焉

日中線は、本州において蒸気機関車（SL）による定期旅客列車が最後に運転された路線として知られています。終点の熱塩駅には転車台がありましたが、距離が短く速度も低速であったため、晩年は機関車を転回させることなく、バック運転で運行されていました。特に、朝の上り列車は逆向き、午後の下り列車は機関車を前にした変則的な運転形態が特徴的でした。

使用車両

日中線で使用されていた主な車両は以下の通りです。

蒸気機関車：C11形、C12形
ディーゼル[[機関車]]：DE10形
客車：オハ61系などの旧型客車

歴史

日中線は、改正鉄道敷設法別表第26号に規定される「山形縣米澤ヨリ福島縣喜多方ニ至ル鐡道」の一部であり、東北地方南部を縦貫する野岩羽線構想の一翼を担う予定でした。しかし、実際には典型的な閑散ローカル線として、主に地元高校生の通学に使われる程度でした。また、沿線にあった鉱山からの鉱石輸送も行っていましたが、鉱山の閉鎖とともに貨物輸送も減少していきました。

廃止とその後

1980年の国鉄再建法により、日中線は第1次特定地方交通線に指定され、1984年4月1日に全線が廃止されました。廃止後は、代替バスが運行されましたが、利用客の減少により、2012年に廃止されました。

現在、日中線の廃線跡は、一部がサイクリングロード「日中線記念自転車歩行者道」として整備され、春には約1000本のしだれ桜が咲き誇り、多くの人々が訪れる観光名所となっています。また、旧熱塩駅は「日中線記念館」として保存されており、当時の面影を今に伝えています。

年表

1938年（昭和13年）8月18日：喜多方駅 - 熱塩駅間が開業。
1957年（昭和32年）7月1日：会津加納駅 - 熱塩駅間の貨物営業を廃止。
1957年（昭和32年）9月1日：会津加納駅 - 熱塩駅間の貨物営業を再開。
1964年（昭和39年）4月1日：会津加納駅 - 熱塩駅間の貨物営業を再度廃止。
1974年（昭和49年）10月31日：蒸気機関車が最後の定期運行。
1974年（昭和49年）11月3日 - 10日：SLさよなら列車を運転。
1981年（昭和56年）9月18日：第1次特定地方交通線として、廃止承認。
1983年（昭和58年）11月1日：喜多方駅 - 会津加納駅間の貨物営業を廃止。
1984年（昭和59年）3月31日：「さようなら日中線号」がプッシュプル運転。
1984年（昭和59年）4月1日：全線が廃止。

駅一覧

喜多方駅
会津村松駅
上三宮駅
会津加納駅
熱塩駅

関連情報

日中線は、その短い歴史の中で、様々な物語を紡いできました。ローカル線の衰退、蒸気機関車の終焉、そして廃線跡の活用など、多くのテーマを私たちに投げかけています。日中線の跡地を訪れることで、鉄道の歴史だけでなく、日本の地方の現状について考えるきっかけになるかもしれません。

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