日光観光ホテル

日光観光ホテルの歴史と変遷

日光観光ホテルは、栃木県が中禅寺湖畔に建設し、日光金谷ホテルが経営を受託したホテルであり、現在の中禅寺金谷ホテルの前身にあたります。その設立から現在に至るまでの歴史は、日本の社会情勢と深く関わっています。

設立の背景

1936年（昭和11年）、栃木県は外国人観光客誘致のための国の政策に応じ、大蔵省預金部の資金を借り入れてホテルを建設することを決定しました。経営は民間事業者に委任する方針とし、かねてより観光ホテルの構想を持っていた栃木県は、中禅寺湖畔にホテルを建設することを決定しました。
1937年（昭和12年）10月1日、栃木県と金谷ホテルは観光ホテルの建設と経営に関する契約を締結。金谷ホテルは1962年（昭和37年）までに大蔵省からの借入金25万円を完済する計画でした。そして1940年（昭和15年）7月16日、総工費31万円、設計施工を清水組（現・清水建設）が担当し、日光観光ホテルが竣工しました。

戦時下の苦難と焼失

竣工から2日後の1940年7月18日、日光観光ホテルは営業を開始しましたが、1941年12月に太平洋戦争が勃発。経営は困難となり、1943年には金谷ホテルが県に償還期限の延長を求めました。1945年（昭和20年）4月には大日本帝国海軍の研究班に借り上げられ、一般営業を停止しました。

終戦後の1946年（昭和21年）5月、GHQに接収され、軍人休養施設として利用されることになります。1947年（昭和22年）には調達命令を受け、日光観光ホテル隣接の湖畔にボートハウス（中禅寺湖畔ボートハウスとして現存）が建設されました。

しかし、1949年（昭和24年）4月、失火によりホテルは焼失してしまいます。火災の原因については、中禅寺金谷ホテル側は「アイロンの消し忘れ」としていますが、『日光市史』では米兵の過失とするなど、詳細は不明です。翌年、金谷ホテルによって規模を縮小して再建されました。

再建から現在へ

1952年（昭和27年）に金谷ホテルは接収解除されましたが、日光観光ホテルは駐留軍のレクリエーション施設として必要とされ、1957年（昭和32年）まで軍の管理下に置かれました。そして1965年（昭和40年）、「中禅寺金谷ホテル」と改称し、名実ともに金谷ホテルとして新たなスタートを切りました。

施設の概要

竣工当初の建物は、敷地23.158坪に木造地上3階、地下1階建ての近代的な日本風建築でした。総坪数は870坪、客室は39室（バス付洋室10室、バス無し洋室12室、日本室17室）で、収容人員は76名でした。ホテル建設にあたっては、敷地内の橅や楢の木を伐採した木材を使用し、重厚な造りとなっていました。

焼失後に建てられた2代目の建物は、建築面積448.34坪、木造地上2階地下1階建てで、清水建設が設計施工を担当しました。客室数は23室（全室シャワー付き）、収容人員は46名と規模が縮小され、内外装ともに洋風なデザインが採用されました。

現在の中禅寺金谷ホテルは、その歴史と伝統を受け継ぎ、中禅寺湖畔の美しい景観と共に、訪れる人々を温かく迎え入れています。

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