日本とルーマニアの関係

日本とルーマニアの関係は、20世紀初頭に外交関係が樹立されて以来、両国間で様々な交流が行われてきました。ここでは、両国関係の歴史的経緯、外交、経済、文化交流について詳しく見ていきましょう。

歴史

1902年、日本とルーマニアは、当時のオーストリア＝ハンガリー帝国駐在の公使間で外交関係樹立に向けた最初の協議を行いました。1917年には正式な外交関係が樹立し、第一次世界大戦後の1921年には在京ルーマニア公使館、1922年には在ルーマニア日本公使館が開設されました。1923年には大阪にルーマニア名誉総領事館が開設されています。

第二次世界大戦中、両国は1944年に外交関係を一時断絶しましたが、戦後の1959年に回復し、1964年には相互に大使館を設置しました。冷戦時代も友好関係を保ち、2002年には外交接触100周年を記念してルーマニア大統領が訪日、「日本とルーマニアの友好、協力とパートナーシップ共同声明」が調印されました。2009年には戦後外交関係再開50周年を記念し、両国で記念行事が開催され、秋篠宮同妃両殿下がルーマニアを訪問、ルーマニア大統領夫妻が日本を公式訪問しました。2021年には、外交関係樹立100周年を迎えました。

外交関係

両国は友好国として、要人往来が盛んに行われています。ルーマニアは2004年に北大西洋条約機構（NATO）、2007年に欧州連合（EU）に加盟しており、日本はNATOのグローバル・パートナーシップ国であるとともに、同盟国であるアメリカを通じて安全保障面でも協力関係にあります。

ルーマニア要人の訪日

2002年には、外交接触100周年を記念してイオン・イリエスク大統領が訪日し、小泉純一郎首相と首脳会談を行い、日本の国連安保理常任理事国入り支持や、ルーマニアのEU加盟を見据えた経済協力、テロ対策等について話し合いました。

2005年には、トラヤン・バセスク大統領が愛知万博訪問のため訪日し、小泉首相と首脳会談、同年にはウングレアーヌ外相が麻生太郎外務大臣と会談し、南欧やバルカン半島の安定について議論しました。2007年にはタリチェアヌ首相が安倍晋三首相と会談し、ルーマニアのEU加盟を祝し、日本への常任理事国入りを支持しました。2010年にはバセスク大統領が再び訪日し、鳩山由紀夫首相と会談しました。2013年にはコルラツェアン外相が岸田文雄外務大臣と会談し、「日本－ルーマニアの新たなパートナーシップに関する外相共同声明」が発表されました。2014年にはヴォイネア予算担当大臣が岸信夫外務副大臣と会談し、円借款に関する協議を行いました。2019年にはヨハニス大統領が即位礼正殿の儀のため訪日、安倍首相と会談し、友好関係を確認しました。2023年には、ヨハニス大統領が実務訪問賓客として訪日し、天皇皇后両陛下との会見や岸田首相との首脳会談が行われました。

日本要人のルーマニア訪問

2007年には、麻生太郎外務大臣がルーマニアを訪問し、ウングレアーヌ外相との会談後、ブカレスト大学への文化無償資金協力贈与契約署名式に出席しました。2013年には、谷垣禎一法務大臣（当時）がルーマニアを訪問し、「日本・ルーマニア法務省間の協力に関する共同声明」を発表。同年には岸信夫外務副大臣がルーマニアを訪問。2018年には安倍晋三首相がルーマニアを訪問し、ヨハニス大統領と会談、安全保障、文化、経済など幅広い分野での協力について話し合いました。

経済交流

貿易

日本の対ルーマニア貿易は、輸出額が421億円に対し、輸入額が937億円と、日本側が赤字となっています。日本からは自動車、電気機器、化学製品などを輸出し、ルーマニアからはたばこ、電気機器、衣類などを輸入しています。日本とEUの経済連携協定締結以降、ルーマニアの対日貿易は拡大傾向にあります。

日本企業の進出・投資

2019年時点で、ルーマニアに進出している日系企業は106社に上ります。投資はブカレスト近郊やトランシルバニア地方に集中しており、製造業ではJTI（日本たばこ）、住友電装、矢崎総業などが進出しています。2016年には日本電産が家電用電気モーター製造企業を買収しました。特に自動車産業関連の投資が多く、欧州連合の拡大に伴い、自動車製造拠点としてのルーマニアの可能性が注目されています。このため、ワイヤーハーネス用電気回路部品などの自動車部品の輸入が増加しています。その他、住友商事、NTTデータ、郵船ロジスティクスなどの企業もルーマニアに進出しており、その分野は多様化しています。販売業では、ホンダ・トレーディング、ブリヂストン、ミツトヨなどが進出しており、約2000万人の人口を持つルーマニア市場の大きさが注目されています。

経済支援

日本は、ルーマニアの民主化・市場経済化を支援するため、1991年から技術協力や文化無償資金協力を開始しました。1996年からは円借款や一般無償資金協力を開始し、「コンスタンツァ南港整備計画」、「道路整備計画」、「ブカレスト＝コンスタンツァ間鉄道近代化計画」、「トゥルチェニ火力発電所環境対策計画」など、複数のインフラ整備プロジェクトに貢献してきました。2010年には、「ブカレスト国際空港アクセス鉄道建設計画」に関する交換公文が署名され、これが最後の円借款事業となる予定です。また、草の根レベルでの協力として、1997年から青年海外協力隊が派遣され、青少年活動や医療分野で活動しました。ルーマニアの経済発展とEU加盟に伴い、日本の支援は段階的に縮小され、2011年度末に終了しました。これまでの累計支援額は1200億円を超え、日本はルーマニアの主要援助国の一つでした。

文化交流

ルーマニアでは日本文化に対する関心が高く、音楽や演劇分野で活発な交流が行われています。特にシビウ国際演劇祭には毎年日本の劇団が参加し、中村勘三郎、野田秀樹、野村萬斎などの文化人が招待されています。

学術分野では、21世紀に入り、日本研究・日本語学習への関心が高まっており、ルーマニアの日本語学習者数は東欧でポーランドに次いで多く、2000名以上にのぼります。ブカレスト大学は2005年に日本研究コースの修士課程を開設し、2010年に日本研究センターを設立しました。また、バベシュ・ボヤイ大学（クルージュ・ナポカ市）とブカレスト経済大学も日本文化センターを設立しており、日本研究・日本文化の発信拠点となっています。大学間交流も活発に行われており、ブカレスト大学は山形大学や早稲田大学、バベシュ・ボヤイ大学は愛媛大学や神戸大学など、ブカレスト経済大学は長岡技術科学大学などと学術交流協定を締結しています。

都市間交流も活発に行われており、神奈川県横浜市とコンスタンツァ市、岐阜県高山市とシビウ市、東京都武蔵野市とブラショヴ市、福岡県川崎町とブレアザ町が姉妹都市提携を結んでいます。

外交使節

駐ルーマニア日本大使・公使
駐日ルーマニア大使・公使

脚注

外務省ルーマニア基礎データ

参考文献

六鹿茂夫(著)『ルーマニアを知るための60章エリア・スタディーズ』2007/10/5

外部リンク

在ルーマニア日本国大使館
在日ルーマニア大使館

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