日本のフリーメイソンリー

日本のフリーメイソンリー：歴史、活動、そして陰謀論

日本のフリーメイソンリーは、18世紀末に初めてその足跡を印し、幕末の開国を経てロッジが設立されました。この記事では、その沿革、日本政府による活動制限、第二次世界大戦後のロッジ再建、そして現代に至るまでの活動状況を詳しく解説します。

黎明期：江戸時代のロッジ設立

日本におけるフリーメイソンリーの歴史は、江戸時代の鎖国政策下、1779年に長崎出島のオランダ商館に駐在したイサーク・ティチングに遡ります。彼がフリーメイソンであったことが確認されていますが、日本国内でのロッジ設立はさらに時代を下ります。

幕末の1853年、日本に開国を迫ったマシュー・ペリーもフリーメイソンでした。1860年には、横浜で殺害されたオランダ人船長と商人の葬儀が、フリーメイソンの手によって執り行われたという記録が残っています。1864年には、イギリス軍隊ロッジ「スフィンクス」が横浜に設立され、在日イギリス人のためのロッジとして機能し、恒久的な民間ロッジ設立を支援しました。

1866年、「横浜ロッジ No.1092」がイングランド・グランド・ロッジの承認を受け、日本初の恒久的民間ロッジとして設立されました。その後、横浜には「オテントウサマロッジ No. 1263」も設立され、神戸にもロッジが登場するなど、各地に広がっていきました。

日本政府による活動制限

日本人がフリーメイソンに入会したのは、1864年にオランダで入会した西周と津田真道が最初とされています。しかし、戦前の日本では会員はごく少数でした。1887年に発令された保安条例により、秘密結社は禁止され、フリーメイソンもその対象となる可能性がありました。

フリーメイソン側は、政府との協議の結果、日本人を入会させないこと、日本社会への接触・宣伝をしないことを条件に、保安条例の対象外とする「紳士協定」を交わしたとされています。この協定は口頭によるもので、公式な記録は残っていませんが、フリーメイソン側は協定遵守を申し合わせた記録を残しています。

そのため戦前にはフリーメイソンは日本社会から隔絶した存在であり続け、その会員は全員が外国人でした。

第二次世界大戦とロッジの閉鎖

日独伊三国同盟が成立すると、ナチス・ドイツの影響で日本にも「フリーメイソン陰謀論」が広まりました。1941年に太平洋戦争が勃発すると、フリーメイソンは敵国スパイと見なされ、ロッジは閉鎖、書類・備品は押収されました。

戦後のロッジ再建と日本人会員の増加

1945年の終戦後、1946年よりロッジの再建が始まりました。1950年には、佐藤尚武、植原悦二郎、三島通陽、高橋龍太郎、芝均平らが日本人会員となりました。ダグラス・マッカーサーは、皇族や日本の指導者層を入会させようとしましたが、実現には至りませんでした。

1957年には会員数が2500人を超え、東京グランド・ロッジが設立されました。初代グランド・マスターはベネズエラの外交官カルロス・ロドリゲス＝ヒメネスでした。

現代のフリーメイソンリー

現在、日本には日本グランドロッジ管轄のロッジの他、フィリピン系や黒人系のロッジも存在します。また、女性・男性混成のロッジも設立されています。著名な日本人フリーメイソンとしては、西周、津田真道、鳩山一郎などが挙げられます。

日本グランドロッジは、東京メソニックビルに置かれていましたが、老朽化に伴い、2023年に芝パークビルに移転しました。日本グランドロッジは世間において時として「フリーメイソン日本支部」「フリーメイソン日本本部」等の表現が用いられています。

陰謀論とフリーメイソンリー

フリーメイソンリーは、その秘密主義的な性格から、様々な陰謀論の対象となってきました。特に、原子爆弾投下との関連や、政治・経済への影響などが指摘されています。

しかし、フリーメイソンリーの会員は、様々な分野で活躍しており、平和主義者も多く存在します。また、フリーメイソンリーは、政治・宗教とは一線を画し、会員の道徳的な向上と社会貢献を目的とする団体です。

フリーメイソンリーは、その長い歴史の中で、様々な誤解や偏見に晒されてきました。この記事が、フリーメイソンリーの実態を理解する一助となれば幸いです。

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