日本の黒い夏─冤罪

映画『日本の黒い夏─冤罪』

『日本の黒い夏─冤罪』（にっぽんのくろいなつ えんざい）は、2000年に公開された日本の映画で、松本サリン事件と、その通報者が抱えた冤罪を中心に描かれています。作品は第11回日本映画批評家大賞で作品賞を受賞しており、正確なタイトルは『日本の黒い夏［冤enzai罪］』です。

概要

本作の原作には、長野県松本市にある松本美須々ヶ丘高等学校放送部が制作したドキュメンタリービデオ『テレビは何を伝えたか』が用いられています。このビデオは第43回NHK杯全国高校放送コンテストの自由部門で優勝した作品です。映画は1994年6月27日に発生した松本サリン事件の第一通報者である河野義行に対する警察の強引な取調べと、報道機関による誤報の実情を暴露しています。

映画監督の熊井啓は、自身の母親が教鞭を執っていた長野高等女学校（現在の長野県長野西高等学校）の校長が河野義行の妻の祖父であったという縁から、河野家に育った環境を知っており、事件への関与について疑問を抱いていました。熊井監督は、自身の初監督作品である『帝銀事件 死刑囚』での取材経験から、犯行には高度な専門知識が必要で、多くの素人にできることではないと考え、警察の捜査手法に強い関心を寄せていました。

ストーリー

1995年6月、松本市で暮らす高校生の島尾エミと山本ヒロは、松本サリン事件に関するドキュメンタリーを制作することになります。NHK長野放送局などの主要メディアが取材を拒否する中で、ローカルテレビ局「テレビ信濃」が取材に応じ、報道部長の笹野と記者たちが誤報の根源を語ります。

長野県警松本警察署は、事件の第一通報者である神部俊夫の自宅を捜索し、青酸カリの薬品が押収されます。これを受けて、マスコミは「青酸カリから毒ガスを生じさせた」と報じますが、笹野は誤報の経験から裏付けが取れない限り、その報道を行うことはできないと判断します。その後、毒ガスが「サリン」と確認され、テレビ信濃では学者からの証言を報じますが、その内容には誇張が含まれています。

キャスト

• - 笹野誠：中井貴一
• - 神部俊夫：寺尾聰
• - 浅川浩司：北村有起哉
• - 野田太郎：加藤隆之
• - 花沢圭子：細川直美
• - 藤島教授：藤村俊二 など、数多くのキャストが豪華に出演しています。

制作と受賞歴

監督・脚本は熊井啓が手掛け、製作総指揮には中村雅哉が名を連ねています。この作品は、ベルリン国際映画祭で特別功労賞を受賞し、日本映画批評家大賞では作品賞や新人賞、特別賞などが授与されました。本作は、事件の真相や報道の在り方を考察するきっかけを提供しており、多くの視聴者に強い印象を与えています。

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