日本ビルヂング (東京都)

日本ビルヂング

東京都千代田区大手町に存在した日本ビルヂングは、三菱地所によって建設され、1962年（昭和37年）7月に竣工しました。完成時には東洋一の規模を誇るオフィスビルとして知られ、その地下には都市機能に不可欠な東京都下水道局のポンプ施設が併設されていました。また、多くの人が記憶しているのは、2013年の人気テレビドラマ『半沢直樹』で東京中央銀行京橋支店として登場したロケ地としての姿でしょう。

長年の役割を終え、建物の老朽化と周辺のTOKYO TORCHプロジェクトに伴う再開発により、2016年からの段階的な解体を経て、2022年9月末に閉鎖、同年10月から本格的な解体工事が実施されています。

建設とその歴史

この土地は、古くは江戸時代の道三堀や銭瓶橋があり、1929年までは銭瓶町と呼ばれていました。都市化が進む中で、1931年には銭瓶町ポンプ所が設置され、周辺地域の下水処理を担うようになります。三菱地所は1913年にこのエリアの土地を取得しており、再開発を検討するにあたり、他の土地所有者や三越などの主要な賃借人、そして下水施設との調整が必要でした。東京オリンピック開催を控えた都市インフラ整備の機運が高まる中で再開発計画は進み、三越との交渉を経て、既存建物の跡地に新たなオフィスビルが建設されることが決まりました。

最初のビルは「第三大手町ビルヂング」として1962年7月4日に竣工しました。これは後の日本ビルヂングの一部にあたり、三越の配送所や日立製作所などが入居しました。その後、周辺の土地権利調整や、下水施設の地下空間が生み出す容積率、そして公開空地を設けることによる特定街区制度の緩和などを活用し、ビル全体の規模を拡大する計画が進行しました。1965年11月26日には第二期工事が竣工し、地下4階、地上14階建て、延床面積約17.3万平方メートルという、当時としては圧倒的な規模の「日本ビルヂング」が誕生しました。ビルの完成後も地下のポンプ施設工事は続けられ、1966年7月に稼働を開始、永代通り側の増築を経て1968年には最終的な姿となりました。

常盤橋地区の発展

日本ビルヂングの建設は、常盤橋地区全体の再開発と連動して進められました。東側には新日鐵ビルヂング（現在のJXビル、現在は解体）、北隣には日本ビルヂング別館（現在のTOKIWAブリッジ）などが同時期に建設され、新たなオフィス街区が形成されました。これらのビル群の地下は一体的な駐車場（日本パーキングセンター）として整備され、首都高速八重洲線の出入口とも直結するなど、交通インフラも拡充されました。約10年をかけた常盤橋地区再開発事業は1973年に完工しましたが、周辺の再開発に伴い、地下駐車場や首都高速出入口の一部は2016年をもって一般利用を終了しています。

新たな未来へ

常盤橋街区における近年の大規模再開発プロジェクト「TOKYO TORCH」において、日本ビルヂングの敷地は中核の一つとなりました。地下のポンプ所機能維持という課題があったため、日本ビルは段階的にその役割を終えました。2016年に一部が先行解体されてポンプ所単独の建物「銭瓶町ビルディング」が建設され、機能が移管されました。残りの部分は改修され、2021年度の最終的な解体開始までオフィスビルとして運用が続けられました。現在は、日本ビルヂングの跡地で、TOKYO TORCHプロジェクトのシンボルとなる超高層ビル「Torch Tower」の建設が進められています。長きにわたり大手町の景観を彩り、都市機能の一端を担ってきた日本ビルヂングは、新しい街の歴史へとバトンを渡したのです。

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