日本基督教団松山教会

愛媛県松山市の中心部に位置する日本基督教団松山教会は、日本のプロテスタント教会の歴史において、四国地方における伝道の重要な拠点の一つとして数えられる教会です。その歩みは明治時代に遡り、多くの困難を乗り越えながら地域社会と共に歩んできました。

教会のルーツは1879年（明治12年）12月、愛媛県今治市にあった今治教会が松山への伝道を開始したことに始まります。初期の伝道活動は順調に進み、特に1881年（明治14年）7月5日には、同志社を創立した新島襄をはじめ、松山高吉、横井時雄、上代知新といった名だたるキリスト教指導者たちが松山を訪れ、大規模な説教集会を開催しました。この集会には、昼の部で約700名、夜の部で200～300名もの聴衆が集まり、当時の松山におけるキリスト教への関心の高さを示す出来事となりました。

こうした活動を経て、1883年（明治16年）には、今治教会の伝道師であった二宮邦次郎が松山に定住し、伝道活動をさらに深化させました。そして1885年（明治18年）1月28日、二宮邦次郎を初代牧師として、組合教会系の「組合教会松山第一基督教会」が正式に設立されました。設立当初の会堂は、横浜バンドのメンバーであり、伊予松山藩士族であった押川方義氏が所有していた寄席を仮のものとして使用したと言われています。

教会は設立後、地域社会への貢献にも力を入れました。1887年（明治20年）には、松山市内にあった巽小学校の跡地の土地と建物を取得し、活動の拠点を固めました。同年、教会員であった西村清雄と、アメリカ南長老派宣教師のコーネリア・ジャドソンが協力し、普通夜学会（後の松山女学校、現在の松山学院高等学校）を開設しました。これは、教育機会に恵まれない人々への支援という側面も持つ、先駆的な取り組みでした。さらに、1919年（大正8年）には、教会付属の石手川幼稚園も設立しましたが、こちらは後に閉園しています。

教会の歴史は順風満帆なだけでなく、試練も経験しました。太平洋戦争末期の1945年（昭和20年）7月、松山は戦災に見舞われ、残念ながら教会の会堂もこの時焼失してしまいました。しかし、教会員たちは希望を失わず、戦後間もない1948年（昭和23年）には、三番町の八坂小学校跡地に新たな会堂を再建しました。

戦後の教会は、社会福祉分野にも活動を広げました。1961年（昭和36年）には、養護施設である「あゆみ学園」を設立するなど、地域における支援活動にも積極的に関わりました。

現在の教会会堂は、1984年（昭和59年）に松山市味酒町2丁目に土地を購入したことから始まります。ここに新たな会堂が建築され、1986年（昭和61年）2月9日に献堂式が執り行われました。この会堂は、今日に至るまで松山教会の礼拝と活動の中心となっています。

教会はその長い歴史の中で、多くの牧師によって導かれてきました。初代の二宮邦次郎牧師に始まり、富田政、二瓶要蔵、鈴木浩二、平岡徳次郎、佐藤健男、田中伊佐久、山下萬里、平山武秀といった方々が歴代の牧師を務め、それぞれが教会の発展と教会員の信仰生活に貢献しました。現在は中村博氏が牧師を務めています。また、政治家として知られる長屋忠明氏をはじめ、南廉平氏や山本和氏といった人々が教会員や関係者として教会の歩みに関わってきました。

日本基督教団松山教会は、明治初期の伝道開始から現在に至るまで、福音の宣教と共に、教育や福祉といった多様な活動を通して地域社会に根ざし、その役割を果たし続けています。

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