日本無軌道電車

日本無軌道電車の歴史と背景

日本無軌道電車は、トロリーバスの一種であり、阪神急行電鉄の前身である宝塚本線の近くで運行されていました。兵庫県に位置し、花屋敷駅から新花屋敷の間を1.3km結ぶこの路線は、開業が1928年とされ、わずか4年後の1932年には廃線となりました。この電車の歴史は、当時の技術と交通手段の限界の中で展開された一つの試みでもありました。

無軌道電車の開業

大正時代、田中数之助が開発した新花屋敷温泉地域は、温泉と遊園地が整備された観光地でしたが、花屋敷駅から2kmも離れた山の奥に位置していたためアクセスが難しい状況でした。このため、田中は輸送力の高い手段として無軌道のトロリーバスを導入しようと考えました。当時のバスや路面電車は坂道での性能が向上しきれておらず、特に急勾配対策が必要とされていました。そこで、トロリーバスが選ばれました。

技術的挑戦と路線の運行

1927年には内務省から無軌道電車の運行が認可され、翌年から運行が開始されました。運行は新花屋敷の約700m手前まで行われ、つつじが丘での行き違いが可能でした。運行のために設けられた起点の花屋敷停留所には転車台が、終点の新花屋敷停留所にはループ線がつくられ、車庫や待合室も整備されました。

車両の特徴

使用された車両は、日本輸送機製作所によって製造され、長さ5.5m、幅1.89m、高さ3.0mで、28名定員の箱型のものでした。直流電動機を2基搭載し、タイヤなどを除き国産の部品で構成されていました。車両のカラーリングはワインレッドに白い屋根、そして窓下と裾には黄色の細い帯が施されていました。

運行の成績と廃線

残念ながら運行開始後は運賃の高さや乗り心地の悪さから利用者が伸び悩みました。特に、車両の重さが舗装に亀裂を生じさせ、振動からくる故障も頻発したため、多くの乗客が舗装の道を歩くことを選んでしまうことがあったと言います。さらに、昭和恐慌による経済的影響も受け、田中は借金に苦しみながら1929年に他界。トロリーバスは1932年1月に運行を休止し、4月には正式に廃止されることとなりました。

補遺と影響

日本無軌道電車の運行終了後、車両は釣鐘山登山口に置かれた公衆トイレに転用され、戦後しばらくの間利用されることとなります。その後、路線の跡地や架線柱は戦後まで残っていましたが、現在はすべて撤去されています。この短命な無軌道電車には、献身的な開発者たちの夢と試みが凝縮されており、今なお多くの人々の記憶に刻まれています。

• ---

このように、日本無軌道電車はその短命に反して当時の技術革新の一環を示す存在でした。その後の交通機関や都市開発にどのような影響を与えたか、これからの研究にも期待が寄せられています。

もう一度検索