日本産業館

日本産業館は、2010年 5月1日から同年10月31日まで、中華人民共和国の上海市で開催された上海国際博覧会（上海万博）に出展された、日本の民間企業と地方自治体による共同パビリオンです。

概要

上海世博園内の、江南造船の既存建物を改修・再利用した大屋根の下に、シスコ館や交通銀行館と並んで設置されました。日本の企業や自治体が一体となって大規模な展示を行ったもので、これは外国の民間企業が合同で出展した初めての事例であり、その後、韓国企業聯合館や上海企業連合館なども同様の形態で出展しました。日本の歴史においても、海外での万国博覧会に民間企業と地方自治体がこれほど大規模に連合して出展した例は極めて珍しいものでした。総合プロデューサーは堺屋太一氏が務めました。

パビリオンのテーマは「Better Life from JAPAN（日本の創るよい暮らし）」で、その基本コンセプトは「きれイ、かわいイ、きもちいイ」という、独自の「J感覚」として表現されました。これは、日本の技術や文化がもたらす快適で豊かな生活を来場者に紹介することを目指したものです。

参加者

多岐にわたる分野から、日本の主要な企業や団体、自治体が参加しました。主な出展企業には株式会社INAX、大塚製薬株式会社、キッコーマン株式会社、帝人グループ、テルモ株式会社、トステム株式会社、日本郵政グループ、ユニ・チャーム株式会社などが名を連ねました。また、自治体からは静岡県と横浜市が参加。その他、近鉄グループ、ダイキン工業株式会社、株式会社日本航空インターナショナルといった施設参加、SMBCコンサルティング、コクヨ株式会社、白ハト食品工業株式会社、ミキハウスなど多数の営業参加、そして株式会社大林組、株式会社丹青社、TSP太陽株式会社などが出資参加しました。

パビリオンの運営には、総合プロデューサーの堺屋太一氏をはじめ、副総合プロデューサーに北本正孟氏、建築プロデューサーに寺崎由起氏、運営・行催事プロデューサーに林洋司氏、館長に秋岡栄子氏などが携わりました。デザイン面では、喜多俊之氏、坂茂氏、藤本壮介氏、吉岡徳仁氏ら著名なデザイナーが参加しました。

展示と施設

日本産業館では、様々な展示や施設が設けられ、来場者に日本の技術や文化を紹介しました。

メイン展示

帝人グループによる生命科学分野の展示「生命の星」。
テルモによる医療技術の進化を紹介する「3Dシアター医療の進化」。
大塚製薬の健康に関する展示「人類と地球のたからもの」。
ユニ・チャームによる生命の始まりをテーマにした「誕生の軌跡」。
日本郵政グループのコミュニケーションに関する展示「心の架け橋」。
トステムの住宅関連展示「夢のあるくらし金門玉堂」。
INAXによる水回り文化の紹介「青花流水 Blue & White」。
キッコーマンによる食文化の展示「おいしい記憶をつくりたい。」。

特徴的な施設

メインショーシアター「宴 -UTAGE-」: 6分間の映像で、日本の伝統文化から現代のポップカルチャー（AKB48、ガンダム、リカちゃん、初音ミクなど）までを横断的に紹介し、大変高い評価を得ました。演出は元NHKディレクターの村上佑二氏が担当。上映前には中国人アテンダントが日本語と中国語で注意事項をアナウンスし、日本語アナウンスも演出の一部として機能していました。このシアターは非常に人気が高く、シアターを見ずにメイン展示だけを回るための別の列も用意されていましたが、「宴」を見なければ日本産業館の魅力を十分に体験できないとも言われました。
「世界一トイレ」: INAXとサラヤの共催によるユニークな体験施設で、入館時に配布される「福袋」に入っている当たり券を持つ人のみが体験できました。内部には黄金のトイレなども展示されていました。
JALステージ: 日本航空インターナショナルが提供し、週替わりで様々なショーやイベントが開催されました。歌手の植村花菜氏による「トイレの神様」ライブなども行われました。
LED天井壁画「日月天飛翔」: 阪和興業によるもので、美しい光の演出を提供しました。
夢ROBO: 館の西側の壁にある梯子を昇り降りするロボットで、勤勉な日本人を表すシンボルとして展示されました。博覧会終了後は大阪各地で公開されています。

JALステージ、LED天井壁画、夢ROBOは、入館チケットがなくても外から見ることができました。

店舗

館内には複数の店舗があり、日本の様々な商品や食文化に触れることができました。これらの店舗では、中国人スタッフが来場者に対し、日本語で挨拶するなど、日本らしさを意識した接客が行われました。

料亭「紫 MURASAKI」（キッコーマン）: 1人3000元（当時のレートで約42,000円、飲物別）という高級コースのみを提供しました。
未来郵便局体験館（コクヨ）。
大阪屋、たこ家道頓堀くくる、らぽっぽ（白ハト食品工業）などの飲食店。
どんぐり共和国（ベネリック）、mikihouse（ミキハウス）といった物販店。
SMBCC World（SMBCC）、日本美食（本家さぬきや）。

開催経過

日本産業館は、出展に向けた準備が比較的早い段階から進められました。

2007年12月21日：上海万国博日本産業館出展合同会社設立。
2008年9月19日：日本産業館の出展が表明される。
2009年3月9日：正式な出展契約を締結。
2009年7月4日：起工式を実施。
2010年4月20日：プレオープン。
2010年 5月1日：開館。
2010年 10月31日：閉館。
2011年3月31日：上海万国博日本産業館出展合同会社解散。

日本産業館は、民間と自治体の連携による異色のパビリオンとして、上海万博で日本の様々な魅力を発信しました。

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