日本統治下の台湾における台湾人政治運動

日本統治下の[台湾]]における台湾人政治運動は、武力による抵抗から、請願や団体・組合の結成といった政治的手段を用いた活動へと移行しました。この記事では、1915年の「西来庵事件」以降の、台湾人による合法的な反日本統治活動について詳しく見ていきます。武力闘争を含む運動については、[台湾抗日運動を参照してください。

「台湾同化会」から「新民会」までの動き

1914年12月20日、板垣退助の呼びかけに応じた林献堂の尽力により、「台湾同化会」が発足しました。これは、台湾人による最初の合法的な反日本統治活動とされています。表向きは日本人と台湾人の親睦を図ることを目的としていましたが、実際には台湾人の日本人と同等の待遇を求めることが真の目的でした。しかし、台湾総督府の激しい弾圧により、わずか1ヶ月で解散を余儀なくされました。

1918年末には、東京に留学していた蔡培火が、林献堂を会長に「啓発会」を設立しました。この会は、「六三法」の撤廃を目標とする「六三法撤廃運動」を展開しましたが、人事上の内紛や経費問題により、短期間で解散しました。

その後、林呈禄は新たな団体の必要性を痛感し、林献堂、蔡恵如らと共に1920年1月11日、「新民会」を設立しました。林献堂を会長、蔡恵如を副会長、黄呈聰と蔡式穀を幹事に選出し、台湾の政治改革と島民の啓発を目標としました。また、台湾人の政治運動における最初の機関誌『台湾青年』を発行しました。

「台湾議会設置請願運動」

「六三法撤廃運動」は、「啓発会」から「新民会」に引き継がれましたが、林呈禄は、この運動が台湾の独自性を否定し、「内地延長主義」を肯定するものだと批判しました。彼は、「六三法撤廃運動」を中止し、植民地自治の理念に基づいた台湾議会設置運動を提唱しました。

一方、「新民会」会長の林献堂は、日本政府との対立を避け、「半自治」を求めるという穏健な主張を展開しました。「半自治」とは、台湾総督の立法権と財政権のうち、特別会計の予算編成に対する台湾側の協賛権を求めるものでした。

「新民会」は、帝国議会に対する請願権を行使し、「台湾統治法」の制定と、それに基づく「台湾議会」の設置を請願することを決定しました。この「台湾議会設置請願運動」は、1921年1月30日に最初の請願を行いました。具体的な請願内容は、「台湾に在住する日本人、台湾人、原住民の公選された代表者で組織し、台湾の特殊事情に基づく法規と予算議決権を持つ特別代表機関の設置」でした。この運動は、1934年1月30日まで14年間に15回にわたり請願が行われました。

「台湾文化協会」の設立と発展

1921年10月17日、蔣渭水の提唱と林献堂の協力を得て、「台湾文化協会」が設立されました。蔣渭水は、発足総会で「台湾診断書」と題した演説を行い、台湾を患者、自身を主治医に例え、「台湾人は知識の栄養不足症であり、文化運動こそが唯一の治療薬である」と述べました。

「台湾文化協会」の本来の目的は文化的啓蒙でしたが、「台湾議会設置請願運動」においても主導的な役割を果たしました。1923年から1927年にかけて行われた文化講演は、年間300回以上開催され、延べ11万人もの聴衆を集めました。また、1924年から3年間は、林献堂の菜園で夏季学校も開かれました。

1923年以降、台湾にも治安維持法が適用され、文化講演は官憲の厳しい監視下で行われましたが、この監視が逆に台湾人の意識を高める結果となりました。その結果、「台湾文化協会」には、台湾の民族運動のあらゆる勢力が結集しました。しかし、それが皮肉にも分裂の芽を育て、社会主義・共産主義の高揚という世界的影響も加わり、協会内の路線対立が激化しました。1927年1月、「台湾文化協会」は左右両派に分裂し、左派が協会運営の中心となり、右派の林献堂、蔡培火、蔣渭水らは中央委員を辞任しました。

「台湾文化協会」の分裂と「台湾民衆党」の成立

「台湾文化協会」を離れた林献堂、蔡培火、蔣渭水らは、1927年10月10日に台湾最初の合法政党である「台湾民衆党」を結成しました。同党は、「民本政治の確立、合理的経済組織の建設、及び社会制度の欠陥改除」を綱領としました。これにより、台湾人の政治運動は、無産階級運動を立脚点とする「台湾文化協会」と、民族運動を立脚点とする「台湾民衆党」が並立する形となりました。しかし、「台湾民衆党」も、体制内改革を主張する穏健派と体制改革を主張する急進派との対立が生じ、「台湾文化協会」ほどの勢いを得ることはできませんでした。

「台湾民衆党」の路線対立と「台湾地方自治連盟」の成立

林献堂、蔡培火らは、「台湾民衆党」の路線対立を解消するため、新たな団体の設立を計画し、1930年8月17日、「台湾地方自治連盟」を設立しました。同連盟は、台湾の地方自治の推進を目標とし、州、市、街、庄の協議会の協議員を民選に改めることと、協議会を議決機関とすることを要求しました。また、左傾化を避け、地主や資本家を吸収することを目的としました。

「台湾地方自治連盟」は、台湾総督府から活動を認められましたが、「台湾民衆党」や左派活動家からは「第二の台湾公益会」と非難されました。連盟成立後、「台湾民衆党」の内部対立は激化し、党員が他党に加わることを禁止したため、「台湾地方自治連盟」と「台湾民衆党」は正式に決裂しました。

「台湾共産党」の設立

1928年4月15日、コミンテルンの指導と援助により、上海フランス租界にて「台湾共産党」（正式名称「日本共産党台湾民族支部」）が結成されました。同党は、「台湾民族独立」と「台湾共和国の建設」を掲げ、日本の台湾領有を正面から否定しました。「台湾共産党」は、「台湾文化協会」の主導権を掌握し、影響力を拡大させました。

台湾人政治運動の終焉

戦時体制下の国民精神統一運動の中で、「台湾民衆党」、「台湾文化協会」、「台湾共産党」などは官憲の取締りを受けるようになりました。1931年2月18日、「台湾民衆党」が総督府の命令により強制的に解散させられました。同年6月には「台湾共産党」に対する大規模な検挙が行われ、年末には「台湾文化協会」の幹部も検挙されました。「台湾地方自治連盟」は活動を続けましたが、1937年7月15日に自主的に解散し、日本統治下の台湾における台湾人による政治運動は終焉を迎えました。

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