日本鉱業佐賀関硬式野球部

大分県北海部郡佐賀関町（現在の形は大分市）を拠点に活動を展開した社会人野球の企業チーム、「日本鉱業佐賀関硬式野球部」（にほんこうぎょうさがのせきこうしきやきゅうぶ）。金属製錬事業で知られる日本鉱業が母体となり、日本野球連盟に加盟していました。地域に根差し、多くの野球ファンに支えられましたが、時代の波に抗えず、1987年11月にその歴史に幕を下ろしました。

チームの設立と歩み

チームの誕生は1950年代後半に遡ります。1957年12月、日本鉱業の佐賀関製錬所を活動拠点とする硬式野球チームを結成する構想が持ち上がります。そして、この構想が具体化し、翌1958年春には「日本鉱業佐賀関硬式野球部」として正式に発足、本格的な活動を開始しました。

創部当初は、県内リーグや地方大会での実績を積み重ねながら、社会人野球の全国舞台である都市対抗野球大会や社会人野球日本選手権大会を目指しました。チームは着実に力をつけ、創部から約10年後の1967年には、ついに東京ドームの前身である後楽園球場で行われる都市対抗野球大会への初出場を果たします。この初めての全国の舞台では2回戦で惜しくも敗れましたが、これはチームにとって大きな一歩となりました。

1973年には、もう一つの主要大会である日本産業対抗野球大会（現在の社会人野球日本選手権大会の前身の一つ）にも初めて出場を果たし、全国大会への常連としての足がかりを築きました。

輝かしい実績

1970年代後半は、日本鉱業佐賀関硬式野球部にとって特に輝かしい時代でした。チームは円熟期を迎え、全国の強豪と互角以上に戦う実力を示します。

1976年の都市対抗野球大会では、強豪ひしめくトーナメントを勝ち上がり、ベスト8進出という快挙を成し遂げました。そして、同年初めて出場した社会人野球日本選手権大会では、チーム史上最高成績となる準優勝という素晴らしい結果を残しました。これは、チームの歴史において特筆すべき金字塔と言えます。

翌1977年の都市対抗野球大会でも勢いは衰えず、前年を上回るベスト4まで勝ち進みました。この連続した好成績は、当時の日本鉱業佐賀関のチーム力が非常に高かったことを物語っています。

主要全国大会での好成績に加え、地方大会でもその強さを見せつけました。1963年にはJABA九州大会で、1979年にはJABA岡山大会でそれぞれ優勝を飾っています。これらの実績は、チームが常に高いレベルで戦っていた証と言えるでしょう。

主要大会出場歴・最高成績

都市対抗野球大会: 出場6回、最高成績ベスト4（1977年）
社会人野球日本選手権大会: 出場4回、最高成績準優勝（1976年）
JABA岡山大会: 優勝1回（1979年）
JABA九州大会: 優勝1回（1963年）

多くのプロ野球選手を輩出

日本鉱業佐賀関硬式野球部は、多くの才能ある選手を育成し、プロ野球界へと送り出しました。チームで活躍した選手たちが、次のステージでその才能を開花させたことは、チームの誇りでもありました。

主な出身プロ野球選手としては、以下のような選手たちが挙げられます。

緒方勝（投手）: 1962年に国鉄スワローズへ入団しました。
池田重喜（投手）: 1967年のドラフト会議で大洋ホエールズから4位指名を受け、プロ入りしました。
中原勇（投手）: 1969年のドラフト会議で東映フライヤーズから2位指名を受けました。
中村国昭（内野手）: 1969年にドラフト外でアトムズへ入団しました。
渡辺麿史（投手）: 1976年のドラフト会議で近鉄バファローズから4位指名を受け、翌1977年シーズン終了後に入団しました。
藤沢公也（投手）: 1977年のドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受け、翌1978年シーズン終了後に入団しました。ドラフト1位という評価は、彼の高い実力を示しています。

また、元読売ジャイアンツの久保木清選手が、現役引退後に日本鉱業佐賀関で選手（外野手）として競技者登録を行っていた時期もありました。

チームの終焉

1980年代に入ると、日本の経済状況は大きく変動します。特に円高の進行は、輸出産業や金属製錬のような基幹産業に大きな影響を与えました。日本鉱業も例外ではなく、厳しい経営環境に直面します。

経営効率化が喫緊の課題となる中、スポーツ活動の見直しも図られることとなりました。そして、1987年11月、円高不況の影響を受けた経営合理化の一環として、日本鉱業佐賀関硬式野球部の休部が発表されます。この休部は実質的な活動停止を意味し、その後、正式に廃部となり、チームはその歴史に終止符を打ちました。

約30年間にわたる活動の中で、日本鉱業佐賀関硬式野球部は社会人野球界において確固たる地位を築き、大分県、特に佐賀関地域におけるスポーツ振興にも貢献しました。全国大会での活躍や多くのプロ野球選手を輩出した功績は、今なお語り継がれています。

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