日本陸軍鉄道連隊A/B形蒸気機関車

日本陸軍鉄道連隊A/B形蒸気機関車について

日本陸軍の鉄道連隊において使用されていたA/B形蒸気機関車は、特に野戦軽便鉄道での運用を目的とした機関車として設計されました。この機関車は、1901年からドイツのメーカーによって製造され、600mmの軌間を持つ2気筒構造のタンク機関車です。このモデルは、運転台の機器配置や屋根の高さの違いからA形とB形に分類され、それぞれ異なる仕様で製造されました。

A/B形蒸気機関車は、双合機関車とも呼ばれる特異な構造を持っており、背中合わせに連結された2両が1つのユニットとして機能します。この構造により、1人の機関士と2人の助士での運転が可能となっていました。さらに、A形とB形は通常の連結器で接続されており、必要に応じてそれぞれ独立して運行することも可能でした。

この機関車の原設計は、クラウス社が1890年にドイツ陸軍向けに初号機を納入したことに端を発しています。日本の鉄道大隊は試作段階で5セット10両を発注し、1905年には追加の376両が陸軍の要求に応じて製造されることになりました。これらは主に満州での使用を想定していました。

製造は複数のメーカーに分担され、主として以下のように行われました：

• - A/B 1 - 36：ハノーファー機械製作所
• - A/B 37 - 46：クラウス社
• - A/B 47 - 56：ヘンシェル・ウント・ゾーン
• - A/B 57 - 76：ザクセン機械工場
• - A/B 77 - 111：シュヴァルツコップ
• - A/B 112 - 126：アーノルト・ユング機関車工場
• - A/B 127 - 163：ボルジッヒ機関車工場
• - A/B 164 - 188：オーレンシュタイン・ウント・コッペル

これらの機関車は、基本的にクラウス社の設計に基づいて製造されましたが、シュヴァルツコップ製の一部は、構造に若干の変更が加えられました。すべての機関車は1905年から1906年にかけて日本に到着しましたが、日露戦争の講和が成立したため、戦争には間に合いませんでした。

性能面では概ね優秀とされましたが、特に連結運転には勾配が55‰以下に制限されるなどの使用条件がありました。そのため、勾配が急な場合には、2両を同じ方向に向ける運行が推奨されました。多くの機関車は満州や樺太に配備されましたが、国内の鉄道第1・2連隊にも少数が存在し、演習や貸し出しに利用されました。

最後に、第二次世界大戦後には旧外地に配備された機関車の運命は不明となりましたが、一部の機関車は国内の様々な機関に払い下げられ、確認されています。日本の鉄道史において、A/B形蒸気機関車はその独特な設計と多用途な運用で重要な役割を果たしました。これにより、野戦軽便鉄道の運行が一層効率的に行えるようになったといえるでしょう。

もう一度検索