日産・HRエンジン

日産HRエンジン：グローバル小型エンジン戦略の心臓部

日産自動車とルノーグループが共同開発したHRエンジンは、2004年のティーダへの搭載を皮切りに、世界中の小型乗用車や商用車に広く採用されているガソリンエンジンのシリーズです。シリンダーボア径は78.0mm、75.5mm、72.2mmの3種類が開発され、特に72.2mmバージョンはメルセデス・ベンツも開発に参画しています。このグローバルな協業体制が、HRエンジンの成功を支える大きな要因となっています。

HRエンジンのバリエーションと搭載車種

HRエンジンは、排気量や仕様によって様々なバリエーションが存在し、それぞれのモデルに最適化された性能を発揮しています。主なバリエーションと搭載車種を以下に示します。

78.0mm ボア径 エンジン

HR10DE/H4D (ルノー): 999cc直列3気筒。フレックス燃料対応モデルも存在します。ブラジルのマーチやヴァーサなど、新興国市場を中心に採用されました。
HR10DET/HRA0DET: 999cc直列3気筒ターボ。欧州向けのマイクラやアルメーラなど、高出力とトルクを必要とするモデルに搭載されました。
HR10DDT: 999cc直列3気筒直噴ターボ。HR10DETの後継モデルとして、欧州向けのマイクラやジュークに搭載されています。
HR12DE: 1,198cc直列3気筒。マーチ、ノート、ラティオなど、幅広い日産車種に搭載され、燃費性能に優れたモデルとして人気を集めました。
HR12DDR: 1,198cc直列3気筒直噴スーパーチャージャー。アイドリングストップ機構も搭載され、欧州向けのマーチやノートに採用されました。
HR14DDe: 1,433cc直列3気筒直噴。セレナe-POWERの発電専用エンジンとして2023年に登場。ロングストローク設計と高度な振動・騒音対策が施されています。RJCカー・オブ・ザ・イヤー・テクノロジーオブザイヤーを受賞しました。
HR15DE: 1,498cc直列4気筒。世界初のデュアルインジェクターを採用したモデルも存在し、ティーダ、ノート、キューブなど、多くの車種に搭載されました。
HR16DE/H4M (ルノー): 1,598cc直列4気筒。日産、ルノー、三菱、マツダなどの幅広い車種に搭載されており、HRエンジンシリーズの中でも最も普及したモデルの一つです。特にトルクが必要とされる商用車にも採用されました。

72.2mm ボア径 エンジン

HR09DET/H4Bt (ルノー)/M281 (メルセデス・ベンツ): 898cc直列3気筒ターボ。ルノー、メルセデス・ベンツ、日産の複数の車種に搭載されています。
HR12DDT/HRA2/H5Ft (ルノー): 1,197cc直列4気筒直噴ターボ。ルノー車を中心に幅広く採用されましたが、オイル消費問題によるリコールも発生しています。
HR13DDT/H5Ht (ルノー)/M282 (メルセデス・ベンツ): 1,332cc直列4気筒直噴ターボ。メルセデス・ベンツ車にも採用されているモデルで、気筒休止技術なども採用されています。
HR10DET/HRA0/H4Dt (ルノー): 1,332cc直列4気筒ターボ。LPG対応モデルも存在し、日産、ルノー車に搭載されています。
HR10DDT/HRA1/H5Dt (ルノー): 999cc直列3気筒直噴ターボ。ジュークやメガーヌなど、高性能なモデルに搭載されています。

75.5mm ボア径 エンジン

HR12DDV/HR12 (ルノー): 1,197cc直列3気筒。48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルで、ルノーの新型車に採用されています。

HRエンジンの技術革新

HRエンジンは、開発以来、継続的な改良が加えられてきました。カムシャフトの鏡面加工、CVTC（連続可変バルブタイミングコントロール）の作動角拡大、オルタネーターへの回生機能追加などによって、燃費性能の大幅な向上が実現しています。また、デュアルインジェクターの採用や直噴技術、ターボチャージャーの搭載など、燃焼効率の向上にも積極的に取り組んできました。

HRエンジンのグローバル展開

HRエンジンは、日産とルノー、そしてメルセデス・ベンツによるグローバルな協力体制の下で開発・生産されており、世界各国で様々な車種に搭載されています。これは、グローバル市場における小型車需要の高まりと、燃費規制の強化に対応する上で、非常に重要な取り組みとなっています。

まとめ

HRエンジンは、日産のグローバル小型車戦略において重要な役割を担うエンジンシリーズです。その高い燃費性能、環境性能、そして多様なバリエーションは、世界中の消費者のニーズに応えるものです。今後も、更なる技術革新とグローバル展開を通じて、自動車業界に貢献していくことが期待されます。

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