日産・NP35

日産・NP35の概要

日産・NP35は、日産自動車がル・マン24時間レースや全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権（JSPC）に参加するために開発したプロトタイプのレーシングカーです。1990年代初頭、日産はグループCレースにおいて新たなエンジンルールが施行されることを受けて、このマシンの開発に取り組みました。

開発と製作

1991年から、グループCレースでは燃費制限が撤廃され、3.5Lの自然吸気（NA）エンジンの導入が決まります。しかし、日産はこのNA化に反対し、当初はターボマシンでの参戦を考えていましたが、FIAによる厳しいハンディキャップに直面し、1991年のSWC参戦を断念せざるを得ませんでした。それでも、日産は最終的には3.5LのNAエンジンを搭載したグループCマシンの開発を始めました。

NP35の開発は1990年に始まり、エンジンの開発は林義正のチームによって行われ、3.5L V型12気筒エンジンのVRT35が誕生しました。このエンジンは1991年春に完成し、日産の米国子会社であるNPTIの協力のもと、シャシーの開発が進められました。シャシー設計を担当したのはトレバー・ハリス、エアロダイナミクスは鈴鹿美隆が手掛けました。

最初のテスト段階では、インディカー用のシャシーにエンジンを搭載し、開発テストが実施されました。1992年には新たに製作されたNPTI製のシャシーP35でテストが行われましたが、当初はアルミハニカムとカーボンコンポジットを用いたハイブリッド仕様として製造されました。日本国内での開発はNISMOが主導し、フルカーボン製モノコックのNP35が完成しました。

レース戦績

NP35は1992年10月に菅生でシェイクダウンテストを行い、その後10月31日から11月1日にかけてMINEサーキットで行われたJSPCの最終戦に参戦しました。ドライバーは鈴木利男とジェフ・クロスノフが務めましたが、サスペンションのセッティング不良などの初期トラブルが影響し、結果は予選、決勝ともに最下位での終わりとなりました。

当初の日産の計画では、NP35は1993年にル・マン24時間レースやJSPCに参加する予定でしたが、日産の経営不振やSWC、JSPCのカテゴリー自体の衰退に伴い、開発とレース活動は打ち切られることになりました。実戦には一度のみ参加したNP35は、その約1年後に「高速車両の基礎研究」のために菅生でテストが行われました。テスト用のNP35はホイールベースを短縮した仕様で、リアウイングも新たに改良されました。

所蔵とその他の情報

現在、NP35は神奈川県座間の日産ヘリテージコレクションにて保存されており、毎年行われるニスモフェスティバルなどのイベントでデモ走行が実施されています。日産は当初ル・マン24時間レース参加を考えていましたが、F1への参戦も視野に入れてエンジン開発を続けていました。特にウィリアムズとの交渉が進んだものの、経営状況の悪化により実現には至りませんでした。

NP35の開発は、日産自身にとっても重要な挑戦でしたが、結果的に経営環境の厳しさやレースカテゴリーの変化に左右され、思惑通りにはいかなかったと言えるでしょう。

もう一度検索