日立デジタル平凡社

日立デジタル平凡社は、株式会社日立製作所と株式会社平凡社の共同出資によって1996年8月に設立されました。デジタルコンテンツ事業を展開することを目的とし、両社の強みを活かした事業展開が期待されました。

同社が最も注目を集めた事業は、デジタル百科事典の開発と販売です。1997年5月には、国産初のマルチメディア百科事典『マイペディア97(Windows版)』を発売しました。この百科事典は、平凡社の『マイペディア』をベースに、マルチメディア技術を駆使して大幅な改訂と拡張が行われたものです。

『マイペディア97』の最大の特徴は、その情報量の豊富さと先進的な検索機能です。平凡社の『マイペディア』は、小項目事典ながら大百科事典に匹敵する項目数を誇っていましたが、『マイペディア97』では、さらに多くの情報を収録。さらに、静止画、動画、サウンド、地図など、多様なメディアコンテンツを1万点以上も追加しました。これにより、従来の百科事典にはない、視覚的にも豊かな情報検索体験を提供することに成功しました。利用者は、テキストだけでなく、画像や動画、音声などを活用して効率的に情報を検索することが可能となりました。

日立デジタル平凡社は百科事典事業にとどまらず、インターネットを活用した情報サービスにも進出しました。1999年12月には、インターネットを通じて『世界大百科事典』を検索できるサービスを開始、iモード向けの情報サービス「電話で百科」も提供開始しました。これらのサービスは、当時まだ普及段階にあったインターネットにおいて、新たな情報アクセス手段を提供する試みとして注目されました。

しかし、インターネットの普及は日立デジタル平凡社の予想をはるかに超えるスピードで進みました。既存のビジネスモデルでは、急速に変化する市場環境に対応することが困難となり、2000年4月、同社は解散することになりました。

解散後、『マイペディア』の事業は日立グループの株式会社日立ソリューションズ（旧日立システムアンドサービス他）に引き継がれました。日立ソリューションズは、『マイペディア』の販売と保守を継続しましたが、現在は販売を終了しています。

日立デジタル平凡社の歴史は、デジタル技術と百科事典という伝統的な情報媒体が融合した、短命ながらも革新的な試みの歴史でした。同社が開発した『マイペディア97』は、マルチメディア百科事典の先駆けとして、デジタル情報時代の到来を告げる存在となりました。インターネットの普及という大きなうねりの中で、デジタル百科事典という新しい市場を開拓しようとした同社の挑戦は、後世のデジタルコンテンツ事業に多大な影響を与えたと言えるでしょう。その成功と失敗は、今日のデジタル百科事典やオンライン辞書サービスのあり方に、重要な教訓を残していると言えるでしょう。

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